第15回 青森県将棋
グランドチャンピオン戦

今年度出場選手

              
  長谷川 裕 五段      船橋 隆一 四段      鈴木 雄貴 五段       木村孝太郎 五段
  グランドチャンピオン      支部名人          アマ名人            県名人
   有段者選手権者        朝日アマA         朝日アマ@         ランキング4位
                 ランキング1位       ランキング2位

              
  三浦 行  五段      横山 幸男 五段      嘉瀬 松雄 五段       伊東 恒紀 四段
     県王将          赤旗名人         ランキング7位        ランキング8位
   ランキング5位       ランキング6位                 
                              
 ※ ランキング3位の田村 純也五段(アマ竜王)の出場辞退のため、ランキング8位の伊藤 恒紀四段が繰り上がり出場。

<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No1 1回戦-1
 先手 船橋 隆一 四段 vs 後手 横山 幸男 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「こんな決め手初めて見た!」

       
 「▲5五角で先手優勢図」から、以下△6四歩、▲1一成銀、△3六馬、▲2一飛成、△4七歩成で「ここで見たこと無い決め手!図」
もちろん、▲8六桂でも勝ちでしょうが、先手は見たこと無い筋の決め手を繰り出しました。後、11手で後手が投了します。
「ここで見たこと無い決め手!図」からの先手の決め手を考えてみてください!

    
 正解は▲6五香!天敵の歩の上から香車の打ち込む驚くべき筋。以下、△5七と、▲同金寄、△9二玉、▲6四香!、△6三歩、▲7四桂、△同歩、▲6三香不成、△7三桂打、▲6二香成!まで先手の勝ち。香車が6四、6三、6二と一つずつ進んでいく姿が、盾の上から力強く突き破る槍のようです。これだけ鮮やかな香車の働きはなかなか見られません。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No2 1回戦-2
 先手 木村孝太郎 五段 vs 後手 伊東 恒紀 四段 戦

この将棋はここが凄い! → 「プロみたいな柔らかい受け!」

    
 「先手攻め切れるか図」の先手の攻め駒は竜、成桂、持ち駒の角の三枚。▲4五歩がもし攻め駒として機能すれば四枚になる。なかなかぎりぎりの攻め。以下、△3一桂、▲4四歩、△同金、▲4二角、△同銀、▲同成桂、△4一歩!、▲3二成桂、△同玉、▲5二銀、△6八成香、▲同金で「プロみたいな柔らかい受け!図」。攻めが細くになったとは言え、先手は木村県名人。普通は受け切れません。それにも関わらず、ここから五手で後手が受け切ります。しかも、何と金駒を使いません。ここからの五手は絶品の受けです。考えてみてください。

    
 「プロみたいな柔らかい受け!図」から、△2二玉!、▲4一銀不成、△4二歩!、▲6二竜、△3三角!で「柔らかく受け切り図」。△2二玉!は、もし▲4一竜なら△3二銀と叱り付けるスペースを空け、▲4一銀には攻め駒の利きがない地点に△4二歩!、▲6二竜には攻防の△3三角!で鮮やかな受け切り。以下、△3三角を攻撃に使い後手が勝ちきった。金駒無しにこれだけ見事に受けきり、そのまま攻めに転じる。これだけの手順はなかなかありません。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No3 1回戦-3
 先手 嘉瀬 松雄 五段 vs 後手 鈴木 雄貴 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「攻撃する時のリーチが違う!」


    
 まずは、「先手の菱矢倉が手厚い図」の先手と後手のそれぞれの陣形を見てください。
 先手は何より菱矢倉が手厚い。そして、5筋の歩を交換している。また、飛車先不突きと端の位を活かしたい。反面、攻撃力はあまりない。
 後手は、とにかく主導権を握っている。まずは、出っ張っている▲6五歩にアタックしていきたい。また、攻撃の銀と桂が取り残されないように気をつけたい。
 ここから、△6四歩、▲同歩、△4五歩、▲3七角、△6四角、▲1八飛、△6五歩、▲5七銀で「プロとアマの違いが表れる!図」。途中の△6四角に▲6四同角は△6四同銀と銀を使わせてしまうので取りづらい。それではと、端の位を活かした▲1八飛で角の動きを楽にする。後手は△6五歩と位を奪ったが、先手の総矢倉はまだまだ手厚い。そして、ここからの後手の次の一手を考えていただきたい。後手の陣形を見ると、ずっと前から構想してた手順だとよくわかります。

    
 正解は△9三桂!そして、▲2六角、△8五桂と進みました。
 「プロとアマの違いはパンチ力の違いではなく、リーチの違いだ」と、以前聞いたことがあります。まだ来ないと思えるところから△9三桂〜△8五桂と急にリードパンチが飛んできて、もし▲8六銀と交わすと△5五角という強烈なフックが飛んで来ます。△5五角は、先手が5筋の歩を交換したのを逆手に取っています。「攻撃する時のリーチが違う」と言いたくなる後手の組み立てです。
 △8五桂以下、▲5六銀、△7七桂成、▲同金寄、△4四銀打で「後手の菱矢倉が手厚い図」。気がつけば今度は後手が菱矢倉の手厚い陣形。攻めの桂馬と相手の受けの銀と交換して自陣に打ち付け、後は攻めの銀を捌くだけの大変気持ちよい局面。その後は、△4四銀が攻めに参加して後手が勝利しました。菱矢倉は手厚いだけではなく、△4四銀が△5五銀と攻めに転ずることもできるのが強みです。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No4 1回戦-4
 先手 三浦 行  五段 vs 後手 長谷川 裕 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「決め手を与えない受け!」

    
 「「富岡流」に受けに回った図」は角換わり同型腰掛け銀のいわゆる「富岡流」で▲1一角に△4三銀と受け▲2五桂と気持ちよく飛ばれた局面。「富岡流」は大変強力で、これによって角換わり同型腰掛け銀は激減したと言われるほど。この後、後手は猛攻に耐え続けることとなった。
 そして、しばらく進み「ここかから後手は決め手を与えない図」。先手の攻め駒は盤上の飛車と成桂と持ち駒の角、銀と四枚揃っている。もし急所に歩を打たれてしまうと、後手は手の施しようがなくなってしまう。そこで、普通に守っていては攻め切られる。
 1 どういう方針で守れば良いのか?
 2 後手陣の急所はどこか?
この2つを考えた上で、次の後手の次の一手を考えてみてください。

    
 正解は△5五角!後手の方針は「攻め駒を責める!」自分の玉の近くにいる攻め駒が標的になります。ここでは、とにかく「成桂取り」をかけなければならないのです。△5五角に対して、▲4三成桂なら△3四銀とまた「成桂取り」をかけることができる。そして、何より後手陣の「急所」は桂頭。ここに歩を打たれたら受けきれない。その「急所」に銀を配置できるは大きい。そこで、本譜は△5五角に▲3四成桂、そして△2五銀打!とまたも「成桂取り」かつ、桂頭に利かせておく。先手は種駒を盤上から消す訳にはいかないので、▲4三銀とつなげる。それに対して、△3一桂!と今度は「銀取り」。▲4一角と玉頭に利かせる手に対しては△4二金!と「角銀取り」。先ほど打った△3一桂は銀取りなだけではなく、玉頭にも効いている。今度は玉頭に「急所」が変わっている。
 その場その場で変わる「急所」を守りながら、「○○取り」を掛け続ける。これが、決め手を与えない受け!
 この後も戦いは続くのですが、残念ながら時間切れで後手の勝ちとなりました。対局時計をしっかり押せなかったようです。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No5 2回戦-1
 先手 嘉瀬 松雄 五段 vs 後手 三浦 行  五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「ワールド炸裂の会心譜?」

    
 青森将棋界用語に「ワールド」があります。「嘉瀬さんの大局観は凄すぎて、誰にもまねができません!」という畏敬の念を込めて、「嘉瀬ワールド」と呼び、今では単に「ワールド」と言われています。会心譜の感想戦で「ワールド入ちゅうずな!」と仰る嘉瀬さんの笑顔が、私は大好きです。
 「ワールド開始図」は△7三桂と跳ねた局面。まあ、誰でもこう指すところでしょうが、嘉瀬さんのレーダーが反応します。「桂頭を攻めて桂馬を奪い、▲3六桂と打てばわの勝ちだ!」以下、▲6六銀、△6四歩、▲2五歩、△同歩、▲7五歩、△8六歩、▲同歩、△6五歩、▲7七銀、△6四角、▲2七飛、△2六歩、▲同飛、△2三歩で「ワールド途中図」。ここからの三手を考えてください。「ワールド完成図」に至ります。

    
 正解は▲5五歩、△同角、▲3八歩!ワールド完成図に至ります。これで、▲7四歩がどうにもこうにも受かりません。以下、△8五歩、▲7四歩、△8六歩、▲7三歩成、△同銀、▲8八歩、△7四銀、▲3六桂!でワールド想定図になります。最初の「ワールド開始図」から最後の「ワールド想定図」まで、嘉瀬さんは悩む気配もなくパシパシ指しています。 嘉瀬さんには、おそらく「ワールド開始図」の時点で「ワールド想定図」が見えていたのでしょう。
 恐るべし嘉瀬松雄の大局観!
 以下、嘉瀬さんの会心譜になるはずだったのですが…。嘉瀬さんはドラマチックな方、嘉瀬さんの周りでは何かが起こるのです。詰んでいる局面でうまく時計を押せずに時間が切れてしまいました。記録は敗戦ですが、内容は快勝の「ワールド炸裂の会心譜?」と呼ばせていただきます。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No6 2回戦-2
 先手 横山 幸男 五段 vs 後手 木村孝太郎 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「相穴熊戦では『5五の位は天王山』!」

    
 以前は「5五の位は天王山」と言われていたそうですが、今ではあまり言われなくなりました。位よりも玉の堅さが重視という考え方が一般的です。しかし、両者共に玉を固める相穴熊戦になると、「5五の位は天王山」という諺が生き返ってきます。
 「先手5筋の位を取った相穴熊戦図」は先手5筋位取り中飛車対後手一直線穴熊。先手も穴熊なので相穴熊戦になっています。この時、5筋の位は
 1 5筋の歩を突き捨てれば、いつでも「と金作り」を狙える
 2 5筋の位を維持すれば、相手の「大駒(角)の働き」を遮れる
という意味があります。ただし、この二つは両立しません。5筋の位を維持するか、突き捨てるかは先手の権利。どのタイミングで突き捨てるか?が勝敗を分けます。相穴熊戦において、「と金作り」と「大駒の働き」は最重要ポイント。相穴熊戦の「5五の位は天王山」というのは、その二つの鍵を握る位だからです。
 「先手5筋の位を取った相穴熊戦図」から、△3三歩、▲同歩成、△同銀、▲3四歩、△同銀、▲同銀、△同金、▲5四歩!、△同歩、▲5三歩!で「先手5筋位取りの権利を行使図」になります。ついに先手は権利を行使しました。後手はとにかく「と金作り」を防ぐしかなく辛い局面にも見えますが、ここからの後手が見事に切り返し優勢となります。「先手5筋の位を取った相穴熊戦図」からの後手の手順を考えてみてください。9手後、後手は「と金作り」と「大駒の働き」でポイントを得ています。

    
 正解は△7六歩、▲5九角、△5五歩!で「角を動かして、5筋を逆襲図」。△5五歩に▲5五同飛は△4五歩で角が働いてくるので▲3六飛。以下、△3五歩、▲3八飛、△4三銀、▲1五角、△5六歩で「「と金作り」「大駒の働き」が望める図」
 先手が5筋の権利を行使した後の後手の考え方は
 1 突き捨てられた5筋の歩を逆に進め、「と金作り」を狙う
 2 5筋の位が無くなったので、自分の「大駒(角)の働き」高める
になります。後手からは、△5七歩成の「と金作り」と△4五歩〜△6六角の「大駒の働き」を高める二つの狙いがあります。先手の狙いを逆手に取った素晴らしい対応です。以下、後手が勝ちきりました。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No7 2回戦-3
 先手 船橋 隆一 四段 vs 後手 伊東 恒紀 四段 戦

この将棋はここが凄い! → 「攻め駒を一枚ずつ減らしていく受け!」

    
 「先手二枚の攻め図」から、▲4四歩、△4二歩、▲6八金、△7八馬、▲同銀で「先手四枚の攻め図」になります。
 先手は▲4四歩と拠点を作った後、▲6八金と飛車と馬の交換を強要。▲5三馬、▲4五銀、▲4四歩と持ち駒の角で四枚の攻めの形を作りました。
 それに対して、後手は△3三銀、△3二金、△4二歩の三枚の守りで△6四金は遊んだまま。このままでは先手が攻め切れそうです。
 しかし、ここからの後手の受けが見事です。
 「先手四枚の攻め図」からたった四手で先手の攻め駒が二枚になります。そして、その後数手でなんと一枚になってしまいます。
 後手はどういう考え方でこの後、指すのでしょうか?とりあえず後手からの三手を考えてみてください。それが分かった方は、その後どうなって攻めが一枚になるのか想像してみてください。ここからの後手の受けはとにかく秀逸です。

    
 正解は△4八飛、▲6七角、△5六歩!、▲同銀で「先手の攻め駒が二枚に図」。まずは、当然とは言え△4八飛が厳しい。▲5四銀は△4四銀と馬に当てれながら拠点を払われる。馬が逃げると△5四金と遊んでいた金が働き出す。ではと、▲6七角で銀に紐を付けながら▲3四銀を狙うと、今度は△5六歩!と紐を切られる。▲5六同角は△5五金とこれも金が働き出す。この金の活用だけは絶対に許せない。しょうがなく▲5六同銀でついに攻めが二枚になってしまった。後手はたった四手で先手の攻め駒を二枚も減らすことに成功しました。
 もう先手の攻めは怖くない。そこでこの後、後手は攻め合いに出る。△8五飛、▲8六歩、△2五飛と飛車の大転換。しかし、先手はここで▲2六歩!。△2六同飛に▲4三歩成を見せ飛車の成りこみを防ぐ。▲2六歩!に対して△2四飛と後退すると先手は▲6五歩と畳み掛ける。
 本当に見ていただきたいのはここから。△5二歩、▲同馬、△5四金、▲3五歩、△4四金!後手は攻めが続かないと見るや、遊んでいた金で拠点の歩を取りに行った!そして「先手の攻め駒がついに一枚に図」となり、先手の攻めが完全に切れてしまった。この金に働き出されると、気持ちも完全に切れてしまう。
 伊藤四段は居飛車後手番での「攻めか?守りか?」のバランスが抜群。今大会、居飛車後手番で二連勝!

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No8 2回戦-4
 先手 長谷川 裕 五段 vs 後手 鈴木 雄貴 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「銀の繰り替えと厚みの構築!」

    
 長谷川GCは玉を固めない。駒の利きの感覚が抜群で、常に盤面に広がった駒たちが機能している。だから固めなくても、長谷川玉は寄らない。
 「先手棒銀vs後手中飛車図」先手急戦調に見えるが、ここから先手の手順は独特。まずは、▲6六歩!「そこから行くのか!」と声が出そうになる一手。以下、△4五歩、▲同歩、△5五歩、▲同歩、△同角、▲3七銀!、△5六歩、▲4六銀左、△6六角で「ここから先手は厚みを構築図」になります。
 「棒銀にして中央から動かさせたのかもしれない…」
 「△5六歩という拠点をわざと作らせたのかもしれない…」
 「角が働いてきても大丈夫と見切っていたのかもしれない…」
そう考えてしまうほど、この後の先手の「銀の繰り替え」→「厚みの構築」は見事です。ここからの先手の手順が分かった方は、「厚みの構築」を何に利用するか?まで考えてください。

    
 「ここから先手は厚みを構築図」から▲5五歩!△3九角成や△8八角成、▲同玉、△3九角が見える局面で、敢えて飛角の利きの交差点に歩を打つ。
 普通は「歩で位を取る」→「金駒で位を確保する」ですが、本局は「金駒が前に進む」→「金駒の利きに歩を打つ」が何度も出てきます。「金駒の利きに歩を打つ」ことにより、金銀の厚みを活かしています。
 それにしても、角成りを放置するのは普通はできない。しかし、馬を作られても意外に働かない、それよりも「銀(▲3七銀)の繰り替え」→「厚みの構築(▲5六銀)」の方がはるかに大きい。長谷川GCが角成りを放置するんだから、そうだろうなとは思っても最初は信じられなかった。そこで、何度もこの局面をコンピューター相手に指してみる。すると、確かに先手の厚みが活きてきて、角を成っても馬だけでは何ともならない。何度も繰り返す内に、長谷川GCの感覚を少しずつ理解できた。
 ▲5五歩!以下、△4四歩、▲2四歩、△4五歩、▲6六角、△同歩、▲4五銀、△5五飛、▲4六銀、△5一飛、▲5五歩!、△4四歩、▲5六銀でついに「中央に厚みを構築図」に。なんてことでしょう。二枚の銀がグニャグニャ動いているうちに、中央に強力な厚みが出来上がりました。
 次に「構築した厚み」を何に利用するか?です。「中央に厚みを構築図」以下、△2四歩、▲7五角、△3三角、▲3七桂、△7四歩、▲6六角、△5三金、▲6七金、△6四歩、▲7七桂で「先手の狙いは端攻め!図」中央の銀の厚みで▲6六角が安定しています。それを利用して、先手はこの後端攻めを狙います。「厚みってこういう風に使うんだあ」長谷川GCの将棋は感嘆の声が思わずもれる将棋です。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No9 3回戦-1
 先手 嘉瀬 松雄 五段 vs 後手 横山 幸男 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「何を使い、何を使わせないか!」

    
 後手角交換四間飛車に先手銀冠の将棋から「金桂交換で後手有利図」となった。先手の要の金と後手の偏狭の地にいた桂の交換なので玉型にも差が出ている。ここで後手の手番でどうするか?
 先手の主張は、次の▲6四桂と▲2三歩成。そこで後手は△6三金!と、▲6四桂を避けつつ▲2三歩成を相手にしない方針。そこで先手は▲2三歩成は面白くないと▲3三角と馬作りと駒得を狙う。以下、△6二飛、▲1一角成で「何を使い、何を使わせないか図」となる。
 この局面、後手からの三手を考えてください。一手目は普通の手ですが、三手目に有利を拡大するセンスの良い手が繰り出されます。「何を使い、何を使わせないか」という方針で考えれば手が見えてくるはずです。

    
 正解は「銀を使い、馬をつかわせない」。「何を使い、何を使わせないか図」から、△2二歩、▲1二馬、△4五歩!で、「銀を使い、馬をつかわせない図」。
 先手が勝つシナリオは、馬を自陣に引き付け、桂香で効果的な攻めをする、が考えられる。馬を攻めに使っても、後手の囲いは金銀四枚、飛車付きで攻めきれるものではない。そこで、後手の方針は馬を自陣に引かせないとなる。△2二歩は当然として、▲1二馬と次の▲3四馬の攻防を狙ってきたところを△4五歩!この歩を突いておけば、▲3四馬が攻めにしか働かない。そして、この歩を突くと後手の玉から一番離れている銀が活躍しだす。「銀を使い、馬をつかわせない」ことにより、形勢が後手に傾いている。
 以下、▲4五同歩、△5五銀!、▲3四馬、△4六歩、▲3八銀、△6六銀!、▲6九香、△7五銀!、▲3五馬、△3七歩で「銀が活躍し、後手優勢図」。後手の銀は元気一杯に活躍しているのに対し、先手の銀はどんどん僻地に追いやられている。以下、数手で後手に勝利となりました。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No10 3回戦-2
 先手 鈴木 雄貴 五段 vs 後手 三浦 行  五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「どんな局面でも、常に狙っている!」

    
 角換わり腰掛け銀から激しく攻め合って「ここからの先手の方針は?図」。先手から攻める手が無い訳でも無さそうですが、ちょっと無理そう。そして、自玉の上部にはもの凄い厚みがある。そこで、先手の方針は入玉ということになる。以下、▲8一歩成、△1九と、▲9一と、△1七角成、▲9七玉、△2三玉で「どんな局面でも、常に狙っている!図」。ここで、△2三玉に反応した先手は突然意外な一手を指します。ちょっと考えてみてください。

    
 「どんな局面でも、常に狙っている!図」以下の次の一手は、▲1九飛!この前に▲9七玉と入玉一直線のような手を指した後、突然相手の攻め駒を取る。実は、▲9七玉の前にもこのと金は取ることができた。しかし、それには△4四馬!で王手飛車取りがかかる。後手も狙っている。そこで、▲9七玉と玉を動かした後でないと取れなかった。そして、先手の玉上がりに対応した△2三玉は、▲5二馬、△同飛、▲4一角の王手飛車取りの筋が見える危険な位置。さらに、▲1一香が浮いてしまうというマイナスもある。条件が揃った▲1九飛!だった。ただ、△1八歩と指せば勝ち負けはともかく局面は収まった。しかし、後手は△7三歩としたため、▲5二馬、△同飛、▲1七飛、△同香成、▲4一角と先手の狙いが決まってしまった。
 これだけの最終盤で先手も後手も水面下の読みの中に王手飛車の筋を秘めている。本局はたまたま実現しましたが、これくらいのお二人になると「どんな局面でも、常に狙っている!」というのが分かる将棋でした。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No11 3回戦-3
 先手 木村孝太郎 五段 vs 後手 船橋 隆一 四段 戦

この将棋はここが凄い! → 「歩の突き捨てが入るのか?入らないのか?」

    
 
「行方八段の△8六歩!」が私は好きだ。相居飛車の後手で攻撃に耐えた後、行方八段は長考に入る。1時間経っても指さない。「これは苦しいのか?」と行方ファンを不安にさせた後の指し手は△8六歩!反撃の狼煙を上げた後は、攻め続ける。そして、1分将棋になっても間違えない。深夜に勝利を決めた後、「行方先生の将棋はかっこいい!」と何度思ったことか。
 相居飛車で飛車先の歩の突き捨てが入るか?入らないのか?は勝負を左右するくらい大きなものだ。同歩は攻撃側にプラス、手抜ければ防御側にプラス、その他の手は局面による。
 「ここから後手の攻めは?図」は後手の手番。△7七銀成はたね駒が無くなる攻めになってしまう。そこで、後手は△8六歩!と飛車先の歩の突き捨て。これは入るのか?入らないのか?まずは、手抜く手から考える。手抜きで攻撃すると次の△6七金が激痛過ぎる。また、手抜きで▲6六銀と銀を取るのは、△4五銀、▲同銀、△7六桂、▲7七玉、△8七歩成、▲同金、△6七金で決まってしまう。そういう訳で手抜きはできない。では、△8六歩に▲8六同銀は△4五銀、▲同銀、△7六桂、▲7九玉、△6四角、▲1八飛、△6七歩とたね駒が活きてくる展開で苦しい。そこで、△8六歩には▲8六同歩と後手がポイントを得た。
 その後、△4五銀、▲同銀、△6七金、▲同金、△6七銀不成で「ここから先手の攻めは?図」。次の一手は?………正解は▲2四歩!と今度は先手が飛車先の歩の突き捨て。さて、この「歩の突き捨てが入るのか?入らないのか?」それが問題です。

    
 「ここから先手の攻めは?図」から▲2四歩には△6八銀不成!が厳しく、歩の突き捨ては手抜きされてしまった。もし、▲2三歩成、△同金、▲2四歩なら△7七銀成が決め手となる。△7七銀成を▲7七同玉なら△7六銀。以下、▲6八玉には△4六角、▲7八玉には△6六桂、▲8八玉には△8六飛で決まる。△7七銀成を▲7七同桂なら△7六桂、▲7八玉、△6八金、▲同飛、△同桂成で飛車を取ってしまえば良い。△6七銀不成〜△6八銀不成の二連続の不成が決め手だった。
 そこで、△6八銀不成!に▲2三歩成、△同金、▲6八銀と銀を取ったが、以下△2四歩、▲8七銀、△7六桂、▲同銀、△同歩、▲3五桂、△8七銀、▲同玉、△6九角、▲7六玉、△8六飛で「△8六飛までで投了図」となり、後手が勝利した。
 「歩の突き捨てが入るのか?入らないのか?」が勝利に直結した将棋でした。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No12 3回戦-4
 先手 長谷川 裕 五段 vs 後手 伊東 恒紀 四段 戦

この将棋はここが凄い! → 「大局観による五手の読み!」

    
 「1手損角換わり先手早繰り銀図」は後手陣が少し手が遅れている感じ。優劣はともかくまとめるのにはかなり力量が必要な陣形。以下、▲5六歩、△4五歩、▲5五銀、△同銀、▲同歩、△3三桂、▲4四銀、△5六角で「先手の大局観による五手の読み!図」。ここで先手からの五手を考えていただきたい。この局面の急所はどこか?という大局観があれば、展開が読めてくるでしょう。それが分かった方は、その後の後手からの五手も考えてみてください。局面の急所を巡る先手、後手のやり取りが本局の見所です。
 どうしても早く知りたい方は、東奥日報の夕刊をご覧ください。現在、好評掲載中です。

    
 相居玉である本局の急所は5筋。自分の駒をどれだけ中央で働かせるか、相手の駒をどれだけ中央から遠ざけるかが重要となる。
 「先手の大局観による五手の読み!図」から、▲3五歩、△2五銀、▲5四歩、△同歩、▲5八飛で「後手の大局観による五手の読み!図」。後手の銀はそっぽに行き、先手の飛車は中央で働いている。これで先手はポイントをあげた…、ように見えたのだが、ここから後手は見事に切り返す。
 「後手の大局観による五手の読み!図」から、△7八角成、▲同飛、△6七銀、▲2八飛、△3六銀で「後手の駒が5筋へ向かっている図」。先手の飛車はそっぽに行き、後手の銀は中央へ向かっている。
 自分の駒をどれだけ中央で働かせるか、相手の駒をどれだけ中央から遠ざけるかというお二人の五手の読み。このやり取りがさすがでした。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No13 4回戦-1
 先手 木村孝太郎 五段 vs 後手 嘉瀬 松雄 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「絶対に受けがあるはずだ!」

    
 「先手が好形を築いている図」は先手が▲5六銀の好形のため、後手からの先攻はない。そこで、ここから△5二飛と5筋からの動きを見せて、先手の攻めを催促した。後手の狙いは、しばらく辛抱して先手の桂頭を狙い、飛車のこびんを攻めること。△5二飛以下、▲4五歩、△同歩、▲3五歩、△同歩、▲同角、△3六歩、▲4五桂、△3四銀、▲3三歩、△4二金、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩、▲3四飛、△同銀、▲4四角で「後手はどうしのぐか図」。飛車を切られてしまったため、後手からのこびん攻めが無くなった。そこで、徹底防御が必要な局面になっている。もし、ここで受けが無ければ、遡って「先手が好形を築いている図」が既に悪かったということになる。「絶対に受けがあるはずだ!」強い信念を持って、「後手はどう凌ぐか図」からの後手の受けを考えてみてください。

    
 「後手はどう凌ぐか図」から考えられる受けは、
  1 △3三桂と堂々と受ける。 → ▲3一銀が強烈で受けきれない。
  2 △1二玉とさらりと交わす。 → ▲1五歩が見えるので指せない。
  3 △1二香とトリッキーに指す。 → どう見ても本手ではない。
 と、適当な手が見当たらない。そこで本譜では△6五歩と受けなかった。
 おそらく、最初の「先手が好形を築いている図」の時点で苦しかったのだろう。→受けが無いのでしょうがない。→攻め合いに出るしかない。という流れで、「後手はどう凌ぐか図」から△6五歩と指したのではないか?しかし、玉の堅さの違いはいかんともしがたく、まもなく攻めきられてしまった。先手に▲5六銀の好形を作らせたのだからしょうがない、と普通の人だったら考える。
 しかし、コンピューターならどうだろうか?
 後手をコンピューターに持たせてみると、「後手はどう凌ぐか図」以下、△3三桂!、▲3一銀!、△同玉!、▲3三桂成、△7九銀!という受けをひねり出した。(コンピューターの受け!図)これには、意外と受けがあるものだと感心した。人間だったら▲3一銀が味が良すぎて、普通先を考えない。ましてや、好形を作らせた引け目がある分、受けが無いのでは?という気持ちが出てきてしまう。
 さらに、先手をコンピューターに持たせてみると、「後手はどう凌ぐか図」以下、△3三桂!に正解手は▲3一銀ではなく、▲3三桂成なのだそうだ。以下、△3三同金、▲4五桂!と指してきた。(コンピューターの攻め!図)▲4五桂!には△4五同銀と食いちぎる手や、△4四金と角を取る手があって何とか受け切れそうに見えるが、どちらにしてもコンピューターは何とかなると考えているようだ。これには、意外と攻めがあるものだと感心した。
 コンピューターと指す楽しさは、どんな局面でも意外と攻めも受けあるものだという将棋の奥深さを教えてくれるところだ。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No14 4回戦-2
 先手 横山 幸男 五段 vs 後手 三浦 行  五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「どうなったら勝ちがあるか?」

    
 もし、200手近く指して、相手は穴熊で金銀5枚、馬付きだったらどんな気分になるだろう?普通は気持ちが折れますね。
 しかし、「相穴熊から200手近く経過図」から先手は「どうなったら勝ちがあるか?」を考え、実践していきます。まずは、後々の伏線となる▲3六金。以下、△9四角、▲8九龍、△5八角成、▲4六金左、△4八馬、▲3八金、△5七馬、▲4五歩、△6六馬上で「先手の狙いが明らかになる図」。次の先手の一手で狙いがはっきりします。随分と玉の周りが整備され、狙いを実行する好機が訪れました。先手の陣形や持ち駒から「どうなったら勝ちがあるか?」の展開を考えて、先手の次の一手を考えてみてください。

    
 先手が勝つためには玉頭戦に持ち込むしかない!そこで、先手は▲3六金〜▲2七飛で玉頭を厚くし、持ち駒の桂香を活かせる展開に持ち込んだ。
 「玉頭戦に持ち込む▲2七飛!図」以下、△4八歩、▲3四歩、△同銀、▲3五歩、△4三銀、▲2四歩、△同歩、▲2五歩で「桂香を効果的に使っての勝利!図」。後は、桂香で金銀取りをかけ、後手の馬を自陣に引かせないように指せば良い。
 本日4局目の将棋で、超手数の末に「相穴熊から200手近く経過図」から「桂香を効果的に使っての勝利!図」までの流れをイメージできる将棋の体力に、ただただ驚くばかりだ。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No15 4回戦-3
 先手 船橋 隆一 四段 vs 後手 長谷川 裕 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「良くなってからの正確な差し回し!」

    
 「▲1五歩まで先手優勢図」を見ていただきたい。先手は五筋に超強力な厚みを築いている。後手は桂馬が飛んだため、端と桂頭の2つの弱点を抱える。先手はどんどん玉型が整備されるが、後手はこれ以上堅くはならない。無理は承知でも、もう行くしかない。後手はここから駒損覚悟で五筋に突撃していく。「▲1五歩まで先手優勢図」以下、△6四歩、▲同歩、△同銀、▲6五歩、△5五銀右、▲同銀直、△同銀、▲同銀、△同角、▲同飛!、△同飛、▲同角、△2八飛で「ここら正確な差し回しが必要!図」。
 相居飛車戦では、駒得して優勢でも以下攻めにも受けにも正確に指すことが求められる。例えば、先程の手順でも▲同飛!で、もし▲同角だと△4四銀や△4七銀がある。「五筋に超強力な厚みがあるので無理なはず!」位の気持ちで受けていると、あっという間に持っていかれる。
 「ここから正確な差し回しが必要!図」は先手の角得。しかし、一手ミスをすると駒得なんて無かったことになる局面だ。
 次の手は冷静な攻防の一手。最後に詰みにも効いてくる絶妙手だった。ぜひ、考えてみてください。

    
 次の一手は▲4七角!△5八銀を防ぎながら、右桂を守りながら、端攻めを狙っている。素晴らしい攻防の名角だ。
 以下、△4八飛成、▲5八銀、△3九龍、▲6八玉!、△8九龍、▲7九銀、△5四歩、▲9一角成、△5五銀、▲1四歩、△同歩、▲同香で「端攻めが厳しく先手優勢図」になる。途中の▲6八玉!も思い切った受けだ。玉から遠い桂馬を守ったのに、玉から近い桂馬を取らせる一手だからだ。大駒を金銀に近づけて、その後の▲7九銀で封鎖できるという考え方なのだろうが、怖くてなかなか指せない。最後の▲1四同香を△同香と取ると▲1四同角〜▲2六香を狙われるので、この香車は取れない。瞬間的に玉を固めるため金を縦に並べた後手陣。先手は弱点は端攻めと見切っている。
 しかし、この将棋の見所はまだまだ続く。先手優勢は優勢なのだが、後手に勝負、勝負と来られると、際どい受けの手を捻り出さないといけない。ぜひ、棋譜を並べて確認していただきたい。船橋四段の充実振りが伝わってくる。
 それにしても、これだけ駒得してもこんなに正確に指さないといけないとしたら、こういう相居飛車の攻め合いは指していられないと感じてしまう。

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<第15回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No16 4回戦-4
 先手 鈴木 雄貴 五段 vs 後手 伊東 恒紀 四段 戦

この将棋はここが凄い! → 「受けに使えない駒は無い!」

    
 「先手は攻めか?守りか?図」より、先手はどう考えるべきだろうか?後手は馬がよく働いているし、持ち駒も豊富だ。取り合えず受けに回りたくなる。しかし、先手は▲4一銀と攻め合いを目指した。おそらく、△7五桂が打たれない限り寄せられないと判断したのだろう。
 以下、△6二香!、▲7六香、△3一金、▲6二龍、△7八銀、▲9六玉、△4一金、▲8五玉、△5六馬で「受けに使えない駒は無い!図」へ。
 ここから、三手で先手は受けきります。何を使ってどう受けるのか?考えてみてください。

    
 「受けに使えない駒は無い!図」から、▲5九香、△4七馬、▲5六歩で「香と歩で馬を完封!図」。後手の最強の大駒を先手は小駒二枚で完全に封じ込めた。以下、△8三歩、▲同金、△9一桂、▲4三歩、△5三銀打、▲4二歩成、△同金、▲6一龍、△3一桂、▲9一龍で「玉が安泰で先手勝勢!図」。受けの技術だけでなく、攻めのタイミングや踏み込み、玉頭の厚みの作り方、先手の指し手は全て完璧。「鈴木五段、恐るべし」と言いたくなる将棋だった。

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<了>


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