第17回 青森県将棋
グランドチャンピオン戦

                              
<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No1 1回戦-1

 先手 船橋 隆一 五段 vs 後手 伊東 恒紀 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「流れるような攻めからの強手!」

 「ここから流れるような攻めが始める!図」「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その1図」
       
 「ここから流れるような攻めが始める!図」から、▲4五銀!、△同 銀、▲同 歩、△4一玉、▲4八飛!、△3三銀、▲7九玉、△3一玉、▲8八玉、△7四歩、▲1七桂!、△7三桂、▲2五桂!、△6五桂で「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その1図」。▲4五銀!〜▲4八飛!〜▲1七桂!〜▲2五桂!は、先手角換わり腰掛け銀の理想の駒の動き。駒の交換を図りながら、攻め駒が前に進んで行き、受けた駒を攻めている。また、その間に玉が囲いに入っているのも見逃せない。
 先手の桂馬が活躍しだしたので、後手も桂馬を働かせないといけない。そこで△6五桂なのだが、先手はどう対応すべきなのだろうか?
 攻め合いに出るのか?一旦受けにまわるのか?「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その1図」と、それから9手後では随分と景色が変わります。

  「先後の守りの金駒の数が逆転した!図」「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その2図」
       
 「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その1図」から、▲6六銀、△8六歩、▲同 歩、△同 飛、▲8七銀、△8一飛、▲3三桂成、△同 桂、▲8六歩で、「先後の守りの金駒の数が逆転した!図」。「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その1図」では、後手の守りの金駒が一枚多い。そんな状況で攻め合いに出てはいけない。金駒が同数で先手で攻められる時が、攻め合い勝ちのパターンだ。そこで、△6五桂にはしばらく相手をしなければならない。△8六歩以下、守ったり攻めたりしているうちに、「先後の守りの金駒の数が逆転した!図」で先手は銀冠を完成させた。「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その1図」と比べると、随分と景色が違う。流れの中で金駒の数を逆転させる指し回しが実は見事だ。ただ、歩切れの先手はもう少し後手の攻めを受けとめる必要がある。「先後の守りの金駒の数が逆転した!図」以下、△7五歩、▲同 歩、△7七歩、▲同 桂、△同桂成、▲同 金、△6五桂で「△6五桂にどう対応すれば良いのか?その2図」。再度の△6五桂には攻め合いに出るのか?一旦受けにまわるのか?以下、▲6五同銀!、△同 歩、▲5五桂!、△5四銀、▲4四桂!。一枚金駒が多い先手は▲6五同銀!と桂馬を食いちぎって▲5五桂!と攻勢に出た。金駒同数で先手で攻められる、攻め合い勝ちパターンだ。そして、本局随一の妙手▲4四桂!。歩頭に桂馬を打つ意表の一手だ。△4四同歩には、▲4四同歩で歩切れの後手は玉の上部を支えきれない。そこで△4四同歩とは取れないが、▲4四桂!は金の両取り。これは痛すぎる。おそらく常に相手の金を見ているので、こんな手が視野に入るのではないか?そうでもないとこんな強手は浮かぶはずがない。ぜひ棋譜を並べてこの手を味わっていただきたい。以下、先手が勝ち切った。
 流れるように攻めながらも玉形を整える。そして、受けながら力を吸収し、攻め合いのタイミングを掴んで攻勢に出る。最後は、強手で決める。随所に船橋五段らしいゲームコントロールが光った一局だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No2 1回戦-2

 先手 成田 豊文 四段 vs 後手 田村 純也 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「局面のポイントはいったい何なんだ?」

「横歩取り△3三桂戦法は上級者しか指せない!図」「今、後手は何をしているのでしょうか?図」
       
 「横歩取り△3三桂戦法は上級者しか指せない!図」を見ていただきたい。この局面のポイントがわかりますか?普通は「何が何だか?」と感じることでしょう。なぜなら、横歩取り△3三桂戦法は上級者でないと指しこなせないから!個人的な経験では県代表レベル以外でこの戦法を使いこなせている方を見たことがない。
 「横歩取り△3三桂戦法は上級者しか指せない!図」から、△4二金、▲2三角成、△7八と、▲2八玉、△6五銀!、▲4八銀、△6八と、▲3七銀上で、「今、後手は何をしているのでしょうか?図」。ここでの後手の一手を考えてください。何を意図して後手が指しているのか分かれば次の一手はお分かりになると思います。「何が何だか?」の方は、△6五銀!の意味をよくよく考えていただければ答えに近づけると思います。

    「まずは角の利きを遮った!図」     「今度は馬を盤隅に閉じ込めた!図」
       
 「今、後手は何をしているのでしょうか?図」から、後手が負けるパターンは「角や馬が連動して働き、自陣に入られる」。例えば、角か馬どちらかを切って、玉の近くに馬ができたとき。ということは逆に、負けないパターンは「角や馬の働きを弱め、つながりを断ち切る」。例えば、角や馬の利きを遮ったり、働きの弱い場所で閉じ込めたとき。そして、勝つパターンは「相手の大駒を奪い、攻めに転じる」。例えば、角や馬を攻めながら取り切り、攻めることができたとき。
 そう考えると、「今、後手は何をしているのでしょうか?図」からの次の一手は△2五歩!で「まずは角の利きを遮った!図」。何のための△6五銀!だったかというと、歩切れを解消して△2五歩!と打つためだったのだ。これで角の利きは遮った。そして、この隙に馬を攻める。以下、▲2六歩、△3二金!、▲8九馬、△8六桂!、▲9九馬、△7八桂成!、▲9八馬、△7六金!で、「今度は馬を盤隅に閉じ込めた!図」。△3二金!〜△8六桂!〜△7八桂成!〜△7六金!と一貫して、馬を攻め続けている。特に、△8六桂!を見ると、「ここまでして馬を攻めなければならない」局面なのだということが分かる。「今、後手は何をしているのでしょうか?図」と「今度は馬を盤隅に閉じ込めた!図」をよく比べていただきたい。角と馬の連動が完全に断ち切られているのがよくお分かりになると思います。
 この後、角と馬を取り切った後手が本局を制した。それにしても、「局面のポイントはいったい何なんだ?」と言いたくなる難解な将棋だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No3 1回戦-3

 先手 遠瀬 龍二  四段 vs 後手 工藤 俊介  五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「オーディブル戦法の怖さ!」

「普通は△6五歩早仕掛けを予測する!図」 「先手の陣形が少しだけ立ち遅れている!図」
       
 以前、あるスポーツ用語が将棋の本で紹介されていた。それは、「オーディブル」という言葉で、「相手の守備の配置で作戦を変更する」という意味なのだそうだ。四間飛車に対する急戦は正にオーディブル戦法。最初から形を決めずに駒組みを進め、相手の陣形を見て戦法を決めていく。
 「普通は△6五歩早仕掛けを予測する!図」は、△6四歩と突かれた局面。これを見て普通は△6五歩早仕掛けを予測する。△6五歩早仕掛けには、高美濃にして縦からの攻めが有効だ。例えば、▲3五歩や▲4五桂が狙いの手となる。そこで、「普通は△6五歩早仕掛けを予測する!図」からの次の一手は高美濃を構築する▲4七金。それに対して後手は、△6五歩早仕掛けにはしませんと△7二飛。先手は、攻められる筋に飛車を持っていきますと▲7八飛。そして、後手は高美濃には棒銀にしますと△7三銀!とついに作戦を明示した。以下、▲3六歩、△8四銀、▲9八香、△7五歩、▲8八角、△7六歩、▲同 銀、△6五歩、▲5五歩、△同 角、▲5六金、△2二角、▲6七銀で、「先手の陣形が少しだけ立ち遅れている!図」。先手は、本来なら▲5九角〜▲4八角と二手かけて受けなければならないところを▲8八角と一手しか指せなかった。オーディブル戦法に対応しているうちにこういうことになってしまっている。
 では、「先手の陣形が少しだけ立ち遅れている!図」の後手の次の一手を考えてみてください。▲8八角型の弱点を突く一手がでます。

「焦点の歩で四間飛車がしびれている!図」 「桂損からの△4四桂が厳しく先手苦しい!図」
       
 「先手の陣形が少しだけ立ち遅れている!図」から、△7五銀なら▲6五金で四間飛車も戦える。しかし、次の一手は△7七歩!で「焦点の歩で四間飛車がしびれている!図」。▲8八角型のため△7七歩!の処置が難しい。△7七歩!に対して▲7七同飛と取ると、△7五銀、▲6五金、△7六歩、▲7八飛、△8六歩、▲同歩、△同銀、▲7六飛、△同飛、▲同銀、△7八飛で角取りをかけて後手が良い。何なら、▲7七同飛に思い切って△7七同飛成、▲同角、△6九飛、▲5八銀、△8九飛成でも後手が指せている。
 もし、▲4八角型なら△7七歩!に対して▲7七同飛と取り、△7五銀以下の変化で△7八飛が角取りにならない。また、▲7七同飛に△7七同飛成には▲7七同桂が次の▲6五桂〜▲5三歩を見て絶好だ。▲8八角型だと▲7七同桂には△6八飛があって無理。また、そもそも△7七歩!に対して▲5八飛と逃げる手も、次の▲6五金を見せてありそうだ。
 そこで、△7七歩!には、▲7七同角とするしかなく、以下△7六歩、▲5九角、△6六歩、▲同 銀、△8六歩、▲同 歩、△8八歩、▲5五歩、△8九歩成、▲5四歩、△同 銀、▲5五歩、△6三銀、▲6五銀、△6四歩、▲7六銀、△8八と、▲7七飛、△4四桂で「桂損からの△4四桂が厳しく先手苦しい!図」。高美濃を完成させる▲3六歩がマイナスに働き、△4四桂が激痛すぎる。以下、このまま後手が制した。
 四間飛車に対する急戦は正にオーディブル戦法。四間飛車は棒銀に対しては囲いから金を一枚離して使わないと受け切れない。そう考えると、序盤の▲3六歩は不要だったのかもしれない。金がいなくなると▲3六歩を狙われる。一手を省ければ、▲8八角で▲5九角〜▲4八角と受けることができた。しかし、△6五歩早仕掛けに切り替えられたらどうするのか?という問題がある。△6五歩早仕掛けには高美濃にして縦からの攻めを狙いたい。四間飛車はすべての急戦に対応できる体勢で待ち続ける必要がある。少しでも対応を誤ると、相手のまわしに手が届かないまま、土俵から押し出されてしまう。四間飛車に対する急戦は恐ろしいオーディブル戦法だ。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No4 1回戦-4

 先手 鈴木 雄貴  五段 vs 後手 北畠 悟  五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「相矢倉は桂馬が命!」

 「相矢倉ではどの駒を活用する?その1図」 「相矢倉ではどの駒を活用する?その2図」
       

 「相矢倉ではどの駒を活用する?その1図」からの先手の次の一手は何でしょうか?
 矢倉は3三(7七)に必ず金駒がいる。そうなると桂馬の活用が優劣を決まってくる。桂馬はたった2手で3三(7七)を攻撃するできる足が速い駒だからだ。「相矢倉ではどの駒を活用する?その1図」からの次の一手は▲1七桂!。ここから桂馬を使っていく。以下、▲1七桂、△8四銀、▲6五歩、△4二角、▲2五桂、△2四銀、▲4六銀、△7五歩、▲同 歩、△8六歩、▲同 歩、△7五銀、▲7六歩、△8六銀、▲8七歩、△7七銀成、▲同金寄で「相矢倉ではどの駒を活用する?その2図」。
 さて、「相矢倉ではどの駒を活用する?その2図」からの後手の次の一手は何でしょうか?

「桂馬を活用し金を僻地にやることを成功した!図」「後手はついに金を取ることに成功した!図」
       
 「相矢倉ではどの駒を活用する?その2図」からの後手の次の一手は△9三桂!。以下、 ▲8六銀、△8五銀、▲3五歩、△8六銀、▲同 金、△8五歩、▲9六金で「桂馬を活用し金を僻地にやることに成功した!図」。駒を正しく攻めに使えば、相手の守りの駒を無効化することができることがよくわかる。以下、△6六銀、▲3四歩、△8六歩、▲同 角、△同 角、▲同 金、△8五歩、▲9六金、△4九角、▲6八飛、△7六角成、▲7七歩、△7五馬、▲4八角、△9五歩、▲6六角、△同 馬、▲同 飛、△9六歩で「後手はついに金を取ることに成功した!図」。この局面で先後の囲いの金駒数を比較すると1対3と大差となっている。以下、後手の勝利となった。
 そして、この将棋は最後の一手がかっこ良い!ぜひ見てください。 

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No5 2回戦-1

 先手 伊東 恒紀 五段 戦 vs 後手 鈴木 雄貴  五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「終盤にはいろいろな手が秘められている!」

 「▲5五角を見せられた後手はどうする?図」「ここで後手が決め手を繰り出します!図」
       
 まずは、「▲5五角を見せられた後手はどうする?図」からの後手の次の一手は何でしょうか?
 ここでの後手の一手は△6六桂!。「いろんな手があるものだ。」▲6六同歩には王手竜取りがかかる。以下、▲同 角、△同 歩、▲8五桂で「ここで後手が決め手を繰り出します!図」。ここでの後手の次の一手は何でしょうか?ぜひ、考えてみてください!

 「この角を取れないようでは先手はきつい!図」「上部を手厚く押さえて後手の勝ち!図」
       
 「ここで後手が決め手を繰り出します!図」からの次の一手は、△6九角!で「この角を取れないようでは先手はきつい!図」。▲6九同玉には、△6八銀以下の詰みがある。そこで、▲7七玉と逃げたが、この角を取れないのはあまりにきつい。「いろんな手があるものだ。」
 ちなみに、先程の△6六桂!も△6九角!も「王手金取り」。それだけに厳しさを増している。「終盤ではいろいろな手が秘められている。」実力がある方はその中から「金取り」をかけるのが上手い。終盤では、常に「金取り」を狙っているのではないか?だから、△6六桂!や△6九角!のような、「いろんな手があるものだ」と言いたくなる「金取り」を見つけられるのだろう。
 △6九角!、▲7七玉以下は、△7四金打で「上部を手厚く押さえて後手の勝ち!図」。上下の挟撃が出来上がって、以下後手が勝った。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No6 2回戦-2

 先手 成田 豊文 四段 戦 vs 後手 遠瀬 龍二  四段 戦


この将棋はここが凄い! → 「居玉の弱点を突く!」

  「玉形も劣り歩損の後手はどうする?図」   「後手は盤上と持ち駒の桂馬を活用したい!図」
       
 「玉形も劣り歩損の後手はどうする?図」から、後手はどう考えれば良いのだろうか。後手が玉形を整えようとすると、先手が先に万全の体勢になり攻められる。ゆっくりした局面になれば、歩損の弱点をつかれるかもしれないし、持ち駒の歩で効果的な攻めをされるかもしれない。じっとしても良いことはない。
 そこで、勝つためには、後手は動くしかない。動いているうちに、持ち駒の桂馬が大活躍する場所を作れれば、可能性はある。という訳で、「玉形も劣り歩損の後手はどうする?図」から、△4四角、▲3六飛、△3三桂!、▲6七金右、△2五桂!、▲4六歩、△2四桂!で、「後手は盤上と持ち駒の桂馬を活用した!図」。後手は二枚の桂馬をうまく使い、先手の飛車を殺すことに成功した。
 しかし、先手はこの局面は想定内なのだろう。この後、後手が居玉であるという弱点を突き、見事に切り返していく。強気のこの後の展開を考えてみてください。

  「居玉の弱点を突いて先手が優勢!図」   「居玉を上部から攻め先手勝勢!図」
       
 「後手は盤上と持ち駒の桂馬を活用した!図」以下、▲4五歩!、△3六桂、▲4四歩!、△同 銀、▲3六歩、△4九飛、▲6五歩!、△4三歩、▲4五歩、△同 銀、▲1一角成で、「居玉の弱点を突いて先手が優勢!図」。先手は▲4五歩!〜▲4四歩!と強気に攻め合いにでた。にも関わらず、、後手は攻め合いに出られない。なぜなら、「居玉は上部からの攻めに弱い」からだ。玉が低い分だけ、玉頭に成り駒を作られやすい。だから、後手は攻め合いになっても、相手をしなければならない。また、▲6五歩!は王手飛車の筋があるので△4九飛の銀取りを受ける必要がない。「王手○○取りがかかり易い」のも居玉の弱点だ。先手は居玉の弱点を突いて局面をリードした。
 では、以下先手はどうするか?先手の持ち駒を見ると、桂馬や香車、そして歩と上からの攻め駒が揃っている。そこで、以下△8六歩、▲同 歩、△8七歩、▲同 玉、△2九飛成、▲4四歩!、△5四銀、▲5六香!で「居玉を上部から攻め先手勝勢!図」。上部から攻められると居玉は苦しい。以下、先手が押し切った。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No7 2回戦-3

 先手 工藤 俊介  五段 戦 vs 後手 田村 純也 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「少しずつ局面をリードし、それに反撃する!」

  「ここから少しずつ局面をリードする!図」   「今度は一歩交換をどう活かす?図」
       
 「ここから少しずつ局面をリードする!図」は、大駒の働きを見ると後手が少し指しやすそう。では、ここから後手はどうすれば良いだろうか?以下、△8六歩、▲同 歩、△同 角、▲8七歩、△4二角、▲4六歩、△9四歩、▲4八飛で「今度は手にした一歩をどう活かす?図」。それでは、一歩を手に入れた後手は、次に狙うのはどこでしょうか?ここで、後手からの三手を考えて見てください。

  「端を攻めて後手戦機をつかんだ!図」   「大駒を使い端を反撃し先手盛り返した!図」
       
 「今度は手にした一歩をどう活かす?図」以下、△9五歩!、▲同 歩、△8五桂!で、「端を攻めて後手戦機をつかんだ!図」。先手が角香桂3枚で守る端を、後手は角香桂そして持ち駒の歩の4枚で攻めている。後手は、次に△9七歩と打てば端を破ることができる。大駒の働きを良くする→一歩を手に入れる→端を破ると、後手は少しずつ局面を見事にリードしている。
 そして、もう一つ見ていただきたいのは、これに対する先手の対応だ。「端を攻めて後手戦機をつかんだ!図」から、▲4五歩!、△3三銀、▲6五歩!、△9七歩、▲6六角!、△8三飛、▲5五歩!、△9五香、▲9四歩!で、「大駒を使い端を反撃し先手盛り返した!図」。後手が飛車1枚で守る端を、先手は角歩の2枚で攻めている。▲4五歩!〜▲6五歩!で大駒を活用する→▲6六角!で端を狙う→▲5五歩!で次の▲5四歩〜▲5五角を見せ△9五香を催促する→▲9四歩!で攻め駒の裏を攻めると、端は受けずに攻めを誘い込んで裏を攻めて随分と盛り返している。
 先手が少しずつ局面をリードし、後手が見事に反撃するところが本局の見所だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No8 2回戦-4

 先手 船橋 隆一 五段 戦 vs 後手 北畠 悟  五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「最低限に囲い相手を攻め倒す!」

  「先手美濃vs後手矢倉の戦い!図」   「先受けされたが矢倉を攻め倒せるのだろうか?図」
       
 「先手美濃vs後手矢倉の戦い!図」は、先手後手共に囲いが完成している。しかし、先手は囲いに入っているが、後手は未だ居玉。これは、金駒を動かす手数が違うから。美濃は2手、矢倉は5手かかっている。先手は2手ほど玉の移動に使っているが、それでも合計4手しかかかっていない。囲いには最低限の手しか使わず、後は攻めに専念する。それが先手の方針だ。
 対抗形の美濃囲いは相手の動きに応じて進展性のある囲いだが、相居飛車や相振り飛車の美濃囲いは自分から動き、相手を攻め倒す囲いだ。
 「先手美濃vs後手矢倉の戦い!図」以下、▲6五銀、△5五角、▲同 角、△同 歩、▲4五歩、△同 歩、▲3五歩、△4四銀で「先受けされたが矢倉を攻め倒せるのだろうか?図」。後は攻めるだけと先手は後手に襲いかかったが、相手の囲いは矢倉の堅陣。そんなに簡単に崩せるのだろうか?▲3五歩に△4四銀と▲3四歩の取り込みを先受けされたこの局面で次の一手を考えてみてください。

  「後手のB面攻撃は不発だった!図」   「先手のB面攻撃が厳しく先手優勢!図」
       
 「先受けされたが矢倉を攻め倒せるのだろうか?図」からの次の一手は▲3四歩!。先手は、先受けを全く気にせず攻めを続行した。部分的には、△3六歩があるため、▲3四歩!とは取り込みづらい。だから、△4四銀が部分的な定跡の一手になっている。しかし、この局面はある特殊条件により、△3六歩が怖くない例外の局面になっている。それは、後手玉が居玉だから。▲3四歩!以下、△3六歩、▲4五桂、△3七歩成、▲1五角!で「後手のB面攻撃は不発だった!図」。後手は、当然△3六歩〜△3七歩成と先手の攻撃陣を攻めるB面攻撃に出たのだが、なんと▲1五角!の両取りがあった。後手玉が居玉のためこんな例外の状況が出来上がってしまった。では、なぜ後手は居玉のままなのか?それは、囲いにかかった手数が違ったから!美濃囲いと矢倉では手数が違いすぎる。だから、後手は居玉の状態に追い込まれているのだ。さらに、先手の美濃囲いは上からの攻めに備えていないので、後手は飛車先の歩を交換している。そこで手を使ったため、後手は玉の移動の余裕が無かった。もしかすると、この局面は飛車先の歩は交換するのが当たり前という人間の常識が通用しない局面だったのかもしれない!飛車先の交換の効果よりも手数の方を重視するのはコンピューター的な考え方だそうだ。
 「後手のB面攻撃は不発だった!図」以下は、△4二歩、▲3七角、△2七角、▲3三歩成、△同 桂、▲同桂成、△同金寄、▲4五歩、△3六角成、▲2八角、△7三桂、▲7四銀、△8八歩、▲同 玉、△4五銀、▲5五角、△6四桂、▲7五桂で「先手のB面攻撃が厳しく先手優勢!図」。先手は交換した桂馬で後手の飛車を攻めた。次に▲8三桂成が入ると将棋が終了してしまう。しかし、これが受けが難しく、以下先手が快勝した。
 「最低限に囲い相手を攻め倒す!」素晴らしい将棋だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No9 3回戦-1

 先手 遠瀬 龍二  四段 戦 vs 後手 伊東 恒紀 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「受けて勝負を決める!」

「ここから後手はどうやって勝ちに行くのか?図」「次の一手が決め手となり後手勝勢!図」
     
 「ここから後手はどうやって勝ちに行くのか?図」は、後手の香得、さらに桂馬で金も取れそうだ。では、この後どういう方針で後手は指すのだろうか?次の一手をまずは考えてみてください。
 「ここから後手はどうやって勝ちに行くのか?図」からの次の一手は△6三歩!。攻め駒の角を責め、「受けて勝負を決める!」のを選んだ。以下、▲4一金、△同 玉、▲5二歩成、△同 玉、▲3一角成で「次の一手が決め手となり後手勝勢!図」。後手の方針に則った次の一手を考えてみてください。

 「ついに先手の攻めが切れてしまった!図」「長い攻防を経て、先手に詰めろがかかった!図」
       

 「次の一手が決め手となり後手勝勢!図」からの次の一手は△8一飛!これが受けの決め手。以下、▲5三歩、△同 銀、▲同 馬、△同 玉で「ついに先手の攻めが切れてしまった!図」。△6三歩!〜△8一飛!で先手の攻めの主役の角を攻め、先手の攻めは完全に切れてしまった。こういう「受けて勝負を決める!」手順は後から見せられれば、そういうのもあるなと思えなくもない。しかし、四段以上の本当に力がある人でないとなかなか指しこなせない。というのは、本当に大変なのはここからなのだ。ここから、完全に受け切るのか?途中から攻め合いに出るのか?を正確に判断しなければならない。そして、相手の攻めを読み切って正確に受けたり、与えてはいけない駒を考えながら攻めたりしなければならない。それも、終盤で切迫した時間の中、疲労した頭で考えなければならないのだ。「受けて勝負を決める!」には本当の将棋力が必要だ。
 △5三同玉!以下、▲3七桂、△6二玉、▲6四歩、△同 歩、▲5三銀、△同 玉、▲4五桂、△6二玉、▲5三金、△7二玉、▲6四飛、△8六飛、▲7五歩、△8三玉、▲6三金、△8四銀!、▲3三桂不成、△4七桂成、▲同 銀、△8八飛成、▲5八歩、△3三桂!、▲3八金、△2五桂!、▲2九桂、△8九竜で「長い攻防を経て、先手に詰めろがかかった!図」。△8四銀!としっかり受け、△3三桂!〜△2五桂!で先手の攻めを逆用して反撃しているところが、後手の本当の将棋力。この局面、実は先手玉に詰めろがかかっている。以下、▲7四歩、△3七銀で先手が投了した。受けながら、詰めろをかける手順を味わっていただきたい。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No10 3回戦-2

 先手 鈴木 雄貴  五段 戦 vs 後手 成田 豊文 四段 戦


この将棋はここが凄い! → 「勝ちのイメージ!」

「先手は詰めろをかけられどう見ても苦しい!図」「ここから先手が勝つイメージは?図」
     
 最初に結果をお伝えすると、本局は先手が勝った。しかし、「先手は詰めろをかけられてどう見ても苦しい!図」を見ていただきたい。先手は△8六角からの詰めろをかけられているにも関わらず、全く後手玉に迫っていない。あえて言えば、▲3四歩がいくらかプレッシャーをかけている程度だ。ここから、先手が勝つ手順が思いつかない。以下、▲3九飛、△3八歩、▲4九飛、△5六銀で「ここから先手が勝つイメージは?図」。先手は詰めろを防ぐために▲3九飛という苦しい受けをひねり出した。
 では、「ここから先手が勝つイメージは?図」からの次の一手を考えていただきたい。勝つ手順を考えても答えは見つからないだろう。勝ちのイメージを描き、こうならなければ先手に勝ちはない!と考えてほしい。

「先手は3筋を攻めるしか勝ちはない!図」「先手は今度は囲いを再構築した!図」
     
 「ここから先手が勝つイメージは?図」からの次の一手は▲9一と!と、こんな忙しい局面で香車を取った。以下、△6五桂、▲3七香!、△8六角、▲同 歩、△8八飛、▲2二歩!、△同 玉、▲6六角!で「先手は3筋を攻めるしか勝ちはない!図」。なぜ、わざわざ香車を取ったのは▲3七香!と打ちたかったから。苦しい先手は▲3四歩をとにかく活かして3筋を攻めるしかない。以下、▲2二歩!〜▲6六角!もその方針に則った手順だ。気が付くと3筋に先手の攻め駒が縦と斜めに利いている。
 以下、△8六飛成、▲7九金、△5四歩、▲4六金、△5五歩、▲5六金!、△5四角成、▲6七金!、△4四銀、▲4六金、△7五歩、▲5八玉、△7六歩、▲6八金上、△4二金、▲7九飛で「先手は今度は囲いを再構築した!図」。先手は▲5六金!で銀を外し、▲6七金!で歩を取り除いた。そして、流れの中で先手は囲いを見事に再構築した。これで随分と先手玉が安全になった。
 この後、まだまだ続くのだが、最後の最後には▲3四歩を活かして▲3三に駒を打ち込んで勝った。先手は「勝ちのイメージ」を持って見事に逆転をしている。それを実現するために自玉の安全を維持する力も見事だ。この将棋を見ると、鈴木五段に勝ち切るのは本当に大変だということがわかる。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No11 3回戦-3

 先手 工藤 俊介  五段 戦 vs 後手 船橋 隆一 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「角の働きの違い!」

 「桂馬取りをかけられた先手はどうする?図」「飛車取りをかけた先手は今度はどうする?図」
     
 この将棋は先手の角がとにかく働く。ここまで上がったり下がったりくるくると動いている。この角の使い方に注目していただきたい。
 「桂馬取りをかけられた先手はどうする?図」以下、▲4五桂、△3七歩成、▲同 角、△4五銀、▲2六角、△4四歩、▲3五金、△8六歩、▲同 歩、△3三銀、▲4五金、△同 歩、▲7一角成、△2二玉で「飛車取りをかけた先手は今度はどうする?図」。先手は▲4五桂から角成りを狙った。後手は△3七歩成で狙いを回避したが、それでも先手は▲2六角〜▲3五金〜▲4五金で強引に▲7一角成を狙った。それに対して後手は△2二玉と囲いに入り、飛車を取られるのに備えた。
 さて、ここで先手はどういう方針で指すでしょうか?

   「後手の角を殺して先手優勢!図」   「桂馬の金取りがかかり先手の優位が拡大!図」
     
 「飛車取りをかけた先手は今度はどうする?図」であっさりと飛車をとってはいけない。先手と後手の最大の違いは角の働き。簡単に馬を消してはいけない。最大限に馬を使って、決定的な局面で飛車を取りたい。そこで、「飛車取りをかけた先手は今度はどうする?図」以下、▲2四歩、△同 歩、▲5三銀!、△3一角、▲3四歩、△同 銀、▲3三歩、△同 金、▲4四銀成、△同 金、▲同 馬、△3三銀、▲7一馬、△3二金、▲4一金!で「後手の角を殺して先手優勢!図」。▲5三銀!〜▲4一金!で後手の角をいじめ、ついに角を殺すことに成功した。しかし、そうは簡単に角は取らない。以下、△6六歩、▲同 金、△8八歩、▲同 玉、△8七歩、▲同 金、△9五桂、▲7五歩、△8五歩、▲同 歩、△8七桂成、▲同 玉、△9三桂、▲4四桂!で「桂馬の金取りがかかり先手の優位が拡大!図」。角を殺された後手は動くしかない。しかし、飛車角がいつ取られるかわかない状態では腰が入った攻めができない。銀が動けば飛車が取られてしまう。そこで、桂馬で攻めるしかない。先手は一旦受けに回り、もらった桂馬で▲4四桂!の金取り。先手の優位が拡大した。
 本局は最後の最後まで先手の角が活躍した。先手の角を使う!という方針が見事だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No12 3回戦-4

 先手 北畠 悟  五段 戦 vs 後手 田村 純也 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「決めの構図を描く!」

 「角を使って先手が局面を有利にする!図」  「先手はここで決めに出る!図」
     
 
「角を使って先手が局面を有利にする!図」から、▲6六歩!、△5五金、▲7四歩!、△5三角、▲7三歩成、△同 桂、▲7四歩、△8五桂で「先手はここで決めに出る!図」。▲6六歩!〜▲7四歩!で先手の角が働き出した。▲7四歩!に△同 歩では▲6四角で先手の角にさばかれてしまう。そこで、▲7四歩!に△5三角だが、△7四同歩と取れない時点で後手は苦しいか?「先手はここで決めに出る!図」から、先手の決めの構図を描いていただきたい。

「香車をとって玉頭を攻めるのが一番速い!図」  「数の攻めが決まり先手勝勢!図」
     
 「先手はここで決めに出る!図」から、▲7三歩成!、△7七桂成、▲8二と!、△7六成桂、▲9一と!、△8六成桂、▲2七香!で「香車をとって玉頭を攻めるのが一番速い!図」。▲7三歩成!〜▲8二と!〜▲9一と!と一直線に駒を取り、そして▲2七香!が一番速い!以下、△2五桂、▲同 香、△3三玉、▲8三飛、△6五歩、▲1五桂!で「数の攻めが決まり先手勝勢!図」。▲1五桂!ともう一枚足して先手の攻めが決まった。優勢な先手が切りあいに出るには、相当な読みが必要。読み違いがあると、あっという間に良い勝負になってしまう。この▲2七香!で決まりという構図があったので、先手は決めに出た将棋だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No13 4回戦-1

 先手 成田 豊文 四段 戦 vs 後手 伊東 恒紀 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「相手の大駒を抑え込む!」

   「ここから後手はどう攻める?図」   「ここから先手はどう対応する!図」
     
 
「ここから後手はどう攻める?図」から、△8六歩、▲同 歩、△8八歩、▲同 玉、△8五歩で「ここから先手はどう対応する!図」。後手は△8六歩〜△8八歩〜△8五歩で歩を使って攻め込んだ。△8五歩に▲8五同歩は△7三桂がある。相手に攻めの桂馬をさばかれてしまった後手は、自分の桂馬をどうしても使わない訳にはいかない。では、ここで先手はどう対応したら良いのだろうか?ただ、守るだけではなく、攻防の手順を考えていただきたい。

 「攻防の角が後手の飛車を抑え込んだ!図」 「今度は後手の角の利きまで遮った!図」
     
 
「ここから先手はどう対応する!図」から、▲3四歩!、△同 金、▲4一角!、△8六歩、▲8三歩!で「攻防の角が後手の飛車を抑え込んだ!図」。先手は▲3四歩!で金を一枚囲いから切り離し、▲4一角!で二枚目の金を攻めた。そして、▲8三歩!で飛車先を見事に止めた。△8三同飛には▲7四角成がある。「攻防の角が後手の飛車を抑え込んだ!図」以下、△7二飛、▲4三歩、△3六歩、▲6一銀、△9二飛、▲7四角成!、△7三角、▲6四歩!で「今度は後手の角の利きまで遮った!図」。飛車を抑え込んだ後は、▲7四角成!〜▲6四歩!で角の働きを止めた。ここまで大駒が使えなくなると後手は苦しい。「相手の大駒を抑え込む」手順が見事な一局だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No14 4回戦-2

 先手 北畠 悟  五段 戦 vs 後手 工藤 俊介  五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「雁木を指す時は柔軟に!」

 「▲3七桂に後手雁木はどう対応する?図」 「後手は、なぜ△4二銀〜△3三銀としたのか?図」
     
 
雁木は相手を攻め倒すだけでなく、相手の攻めを一旦受けることもある。「雁木を指す時は柔軟に!」が雁木使いの合言葉。
 「▲3七桂に後手雁木はどう対応する?図」から、△6四歩、▲2四歩、△同 歩、▲同 飛、△2三歩、▲2六飛、△6二飛、▲7九玉、△4二銀、▲5七銀右、△3三銀、▲9六歩、△3一角、▲1六歩、△1四歩、▲4六銀、△4二角、▲3五歩、△同 歩、▲同 銀で「後手は、なぜ△4二銀〜△3三銀としたのか?図」。ここでの後手の一手を考えてください。ヒントは、「後手は▲3七桂を見て、なぜ△4二銀〜△3三銀としたのか?」。どうでしょうか?

「それは△3四銀右!から桂頭を攻めるため!図」「後手が雁木だったように見えますか?図」
     
 
「後手は、なぜ△4二銀〜△3三銀としたのか?図」からの次の一手は△3四銀右!。以下▲4六銀、△2四歩、▲5五歩、△同 歩、▲5四歩、△5六歩、▲同 金、△3八歩!で、「それは△3四銀右!から桂頭を攻めるため!図」。後手は△3四歩とは絶対に打たない。▲3七桂を見て△4二銀〜△3三銀としてのは、桂頭を攻めるため。△3四歩ではなく、△3六歩や△3八歩を狙いたい。そこで、ガツンと△3四銀右!。これで3筋は後手の勢力圏となった。そこで、先手は5筋から動いていったが、△3八歩!で歩成りが受からない。
 「それは△3四銀右!から桂頭を攻めるため!図」から、▲3六飛、△4三金右、▲5五銀、△3九歩成、▲3五歩、△2三銀、▲4六歩、△3八と、▲4五歩、△3七と、▲同 飛、△5二飛で「後手が雁木だったように見えますか?図」。ここで、後手の囲いを見ていただきたい。流れの中から銀冠が出来上がり、もともと雁木だったとはとても思えない。これだけ手厚く構えられると、先手はとても攻め切れない。
 雁木は相手を攻め倒すだけでなく、相手の攻めを一旦受けることもある。雁木の優秀さが出ている将棋だった。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No15 4回戦-3

 先手 鈴木 雄貴  五段 戦 vs 後手 船橋 隆一 五段 戦


この将棋はここが凄い! → 「体を入れ替える横綱相撲!」

   「ここから後手が攻勢に出る!図」     「ここから先手の方針は?図」
     

 「ここから後手が攻勢に出る!図」から、△6五歩、▲同 歩、△7七角成、▲同 角、△6七銀、▲6四歩、△7八銀成、▲同 玉、△6七金打、▲8八玉、△7七金、▲同 桂、△6七金、▲6三歩成、△5四飛、▲6四と、△4四飛で「ここから先手の方針は?図」。後手は△6五歩、▲同 歩と歩を手に入れてからの△6六歩を作ってからの△7七角成の強攻。以下、△6七銀〜△7八銀成〜△6七金打〜△7七金〜△6七金とどんどん先手の守りが薄くなっていった。まだ、互角だろうが先手を持って勝ち切るのは、相当に大変そう。
 では、「ここから先手の方針は?図」から、先手はどうしたら良いのか?攻め合いを狙う?受け切りを狙う?どちらも難しい。本局は、ここから先手が受けながら攻め、体を入れ替える。その手順を考えてみてください。

「ここでは完全に攻守が入れ替わっている!図」「後手の金駒がどんどんなくなり先手勝勢!図」
     

 「ここから先手の方針は?図」からの先手は▲6八銀!と攻め駒を責めた!以下、▲6八銀、△3九角、▲6七銀、△2八角成、▲7五角、△5一金、▲6三成銀、△6九飛、▲7八銀、△2九飛成、▲5三とで「ここでは完全に攻守が入れ替わっている!図」。なんということだろう。一方的に攻められていたのに、ここでは完全に体を入れ替えている。以下、△6六桂、▲同 角、△4六飛、▲4二と、△同金寄、▲7五角、△7六飛、▲4二角成、△同 金、▲6九歩、△3二金、▲5二成銀、△7二飛、▲5三金で「後手の金駒がどんどんなくなり先手勝勢!図」。先手は最低限の駒で玉を守り、後はどんどん後手の金駒を奪っていった。金駒の数が7対1になっては先手勝勢だ。
 攻め込まれていたはずなのに、気が付くと体を入れ替えている。こういうのを「横綱相撲」というのだろう。

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<第17回 青森県将棋 グランドチャンピオン戦> 棋譜集No16 4回戦-4

 先手 田村 純也 五段 戦 vs 後手 遠瀬 龍二  四段 戦


この将棋はここが凄い! → 「攻めながらの受け、受けながらの攻め!」

  「ここで先手は攻めながら受ける!図」    「ここで先手は受けながら攻める!図」
     

 「ここで先手は攻めながら受ける!図」はまだまだどうなるかわからない局面。ただ、確実なのは先手が一手間違えればあっという間に後手が攻め切りそうだということ。先手は△5五歩と絡まれたのに対してどう対処すべきなのか?
 「ここで先手は攻めながら受ける!図」以下、▲4三角成、△同 金、▲2一飛、△5二角、▲5五金、△同 銀、▲同 角、△4一歩、▲5六桂、△5四金、▲6四桂、△8五角、▲7二桂成、△同 金、▲1一角成、△7五桂で「ここで先手は受けながら攻める!図」。△5五歩を見て△5一歩が無いタイミングで、▲4三角成〜▲2一飛と攻める。△5二角と受けさせてから▲5五金、△同 銀、▲同 角と玉の懐を広げなら角を使った。後手陣の飛車が角に変わったことで攻撃力が極端に下がった。だから、金駒を交換しても先手陣は危なくない。見事に「攻めながらの受け」が通っている。
 では、「ここで先手は受けながら攻める!図」での次の一手を考えていただきたい。自玉を安全にしながら、相手の急所の駒を責める。それによって自分の攻め駒の活用を図る。そんな一手が出ます。

  「ここで先手は攻めながら受ける!図」    「ここで先手は受けながら攻める!図」
     

 「ここで先手は攻めながら受ける!図」からの次の一手は▲8六銀!。将来、端玉になった時の守りを見せながら、後手の守りに一番働いている角に働きかける。この角が動けば、先手の二枚飛車が暴れだす。▲8六銀!以下、△6七銀成、▲同 金、△同桂成、▲同 玉、△5五桂、▲7八玉、△7六角、▲4一竜で「ついに二枚飛車が働き出した!図」。「受けながらの攻め」で後手玉が随分と危うくなった。以下、△6一歩、▲8八玉、△6四金、▲2二飛成、△6七桂成、▲6一竜、△3二歩、▲3一竜上、△7一金打、▲6四竜で「受けに駒を使わせて先手玉が安全になった!図」。自陣に金を投入するしかない後手は攻め駒が3枚になってしまった。先手は▲9七玉に逃げ込めばなかなか寄らない。ここでついに大勢が決した。
 対振り飛車の急戦は「攻めながらの受け、受けながらの攻め!」が必要だ。本局はその絶妙な指しまわしを鑑賞してください。

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文責 阿部浩昭


<了>

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