第60回東北六県将棋大会

今年度出場選手

 岩手県 大将 小山 怜央六段 副将 岩泉 毅五段 先鋒 佐藤 郁人三段
 宮城県 大将 浅野 大輔四段 副将 三浦雄一郎四段 先鋒 工藤 元四段
 秋田県 大将 佐藤 弘康五段 副将 小畑 勝明四段 先鋒 鈴木 勝裕五段
 山形県 大将 増子 雅俊五段 副将 佐藤 智三段 先鋒 山寺 清志五段
 福島県 大将 小野内一八四段 副将 坂井 徹四段 先鋒 堀井厚太郎四段
 青森県 
大将 鈴木 雄貴五段 副将 工藤 俊介五段 先鋒 成田 豊文四段  

※出場選手一覧は「将棋の里山形とゆうまのホームページ」の掲示板から転載させていただきました。ありがとうございます。


<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No1 1回戦-1

 先手 鈴木 勝裕五段(秋田) vs 後手 成田 豊文四段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「どこから攻めるか?その後どこを攻めるか?」

  「ここで流れを変える一手が出る!図」   「ここでどこから攻めるのか?図」
       

 まず、71手目▲5二成桂までの「ここで流れを変える一手が出る!図」を見ていただきたい。先手右四間飛車対後手ノーマル四間飛車で、一目先手の作戦が成功し、後手が一方的に攻め込まれ苦しい局面だ。先手の▲5九金型は珍しいが、△4九飛成を防ぐための趣向と思われる。後手が何とか逆転を狙うには、堅くはない先手の囲いの金をとにかく攻めたい。そして、豊富な持ち駒を活かしたい。特に、使い方が難しい香車はうまく使いたい。そして、桂馬も持ち駒にできそうなので、桂馬を好位置に打ちたい。そして、何より頼みの馬を縦横無尽に使いたい。そんな局面だ。
 では、「ここで流れを変える一手が出る!図」からの次の一手を考えてみてください。
 正解は、△4四歩!。この焦点の歩から少しずつ流れが変わる。以下、▲2五飛、△4七銀、▲2一飛成、△5八銀成、▲同 金、△3六馬、▲4七歩で、「ここでどこから攻めるのか?図」。 △4四歩!で守りにも利いていた飛車をずらし、△4七銀で金に手がかかった。趣向の▲5九金型が裏目に出ているのも痛い。しかし、その後、残った金を使い歩で馬の利きを止め、先手受け切っているように見える。
 では、「ここでどこから攻めるのか?図」からの三手を考えてみてください。実に、振り飛車らしい駒の活用で、局面の流れをグイッと引き寄せます。

  「そして、その後どこを攻めるのか?図」  「後手は挟撃体勢に持ち込んだ!図」
       

 「ここで、どこから攻めるのか?図」から、△5四馬!、▲1二竜、△8四香!で「そして、その後どこを攻めるのか?図」。舟囲いに対して、「桂香持ったら、8四(2六)に打て!」は振り飛車の大事な心得だ。桂香は縦にしか攻められない駒なので、8四(2六)に据えるのが最も効果が高い。そして、それと同時に舟囲いの右辺を攻撃していた馬を竜に当てながら左辺への攻撃にスイッチする。こんな左右からの攻めを見ると、「馬は無敵な攻め駒なのではないか?」と感じてしまう。この後、△7六馬、そして質駒になっている桂馬を△7五桂と打つのが厳しい。以下、▲8八香、△7六馬、▲4四馬、△4六歩、▲同 歩、△5二飛、▲同 と、△7五桂、▲4一飛、△8七香成、▲6八玉、△4七銀で「後手は挟撃体勢に持ち込んだ!図」。▲4四馬で4筋の歩が切れたのを活かし、△4六歩〜△4七銀で今度は再び右辺に攻撃の拠点を作る。どこから攻めて良いのか見当もつかない最初の「ここで流れを変える一手が出る!図」から、見事に攻めの形を作り上げた「後手は挟撃体勢に持ち込んだ!図」まで、「どこから攻めるか?その後どこを攻めるか?」の流れが見事な一局だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No2 1回戦-2

 先手 小畑 勝明四段(秋田) vs 後手 工藤 俊介五段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「工藤五段の攻めのセンス!」

  「ここから攻め駒をきれいにさばく!図」    「ここできれいに決める!図」
       

 本局は工藤五段の攻めのセンスを感じていただきたい。
 「ここから攻め駒をきれいにさばく!図」は、先手は大駒が使えていない。そこで、後手は大駒をうまく使えれば差をつけられる局面だ。ここで、工藤五段は△8六歩から大駒を活用する。以下、 ▲8六同歩、△7五角、▲6六銀、△同 角、▲同 金、△8六飛で十字飛車、きれいに技がかかった。その後、 ▲8七歩、△6六飛、▲6二歩成、△同 金、▲4四歩、△同 銀、▲3六桂、△3三銀、▲4四桂打、△4三銀、▲5四銀、△4四銀直、▲同 桂、△同 銀、▲4三銀打で「ここできれいに決める!図」。ここからの三手を考えていただきたい。工藤五段は一瞬で決めます!

  「これで金を攻めることができる!図」   「まで先手玉を詰まして後手の勝利!図」
       

 「ここできれいに決める!図」から、後手の工藤五段は△7六桂、▲9八玉、△5八歩!で、「これで金を攻めることができる!図」。
 後手は金取りを先にかけられたが、先手は攻め駒不足。手番を持っている後手は、うまく金取りをかけられれば勝ちになる。しかし、先手は飛車が守りに利いていて、すぐには金取りをかけるには技がいる。そこで、後手は△7六桂と急所に桂馬を据えたあと、△5八歩!。これは「(攻めの)大駒は近づけて受けよ!」の裏格言「(受けの)大駒は近づけて攻めよ!」通りの攻め。これがどうにもこうにも受けづらい。そもそも△5八歩!は、△8八金以下の詰めろ。では、▲6七歩と飛車道を止めると、△6七同飛成で無効。そこで、△5八歩!には▲5八同飛と飛車の利きを通すしかない。以下、△6九飛成、▲2八飛、△7八竜、▲同 飛、△8八金、▲同 飛、△同桂成、▲同 玉、△7六桂、▲7七玉、△8八角で「まで先手玉を詰まして後手の勝利!図」。△5八歩!以下は一方的に決めた。後手のスピード感ある攻めに、先手の動きが止まって見えてしまう。きれいな決め方だった。
 十字飛車から金の攻め方という工藤五段の「攻めのセンス」をぜひ感じていただきたい。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No3 1回戦-3a

 先手 佐藤 弘康五段(秋田) vs 後手 鈴木 雄貴五段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「高い囲いの攻め方!」

  「次の一手は形を決めすぎか?図」   「後手にはどういう局面が見えているのか?図」
       

 本局は相振り飛車となった。相振り飛車は攻めの飛車の位置と守りの囲いの関係と、角道をどちらが通しているかがポイントになる。
 「次の一手は形を決めすぎか?図」から、後手は△3六歩!と飛車先を突いた。以下、▲3六同歩、△同 飛、▲4八玉、△3四飛、▲4六歩、△4二銀、▲5八金左で「後手にはどういう局面が見えているのか?図」。△3六歩!以下は、後手は飛車の位置を先に決めなければならない。そこで、先手はそれに対応した囲いを後出しで選ぶことができる。浮き飛車を選択した後手に対して、先手は高美濃や矢倉のような「高い囲い」を目指せば有利になる。
 しかし、△3六歩!は先に飛車の位置を相手に見せて「高い囲い」をおそらく誘っていたのだろう。「後手にはどういう局面が見えているのか?図」から、後手は流れるような組み立てで有利に持ち込む。まずは、次の意表をつく一手を考えていただきたい。そして、その後どういう展開に持ち込むのか構想してみてください。

 「次の一手は自ら角道を止める△3三銀!図」「▲3五同歩とできないようでは後手優勢!図」
       

 次の一手は△3三銀!で「次の一手は自ら角道を止める△3三銀!図」。ここから後手はどういう局面を想定しているのだろうか?以下、▲6五歩、△2四歩、▲4七金、△2五歩、▲3六歩、△2四飛、▲3七銀、△3四銀!、▲2二角成、△同 飛、▲3八金、△3五歩!で「▲3五同歩とできないようでは後手優勢!図」。後手は2筋に狙い先手の矢倉を誘い、棒銀の形に持ち込んだ!先手は囲いに手数が掛り、▲3五同歩とできない状態で棒銀を受けなければいけなくなった。これは後手が技を決めた形だ。以下、先手は千日手を選択した。
 鈴木五段の「高い囲い」を誘い、棒銀に持ち込む構想が秀逸な一局だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No4 1回戦-3b

 先手 鈴木 雄貴五段(青森) vs 後手 佐藤 弘康五段(秋田) 戦

この将棋はここが凄い! → 「勝負手で入玉を阻止する!」

 「後手は金駒三枚で入玉を防げるのか?図」  「ここで思い切った勝負手が出る!図」
       

 先後入れ替えて、再び相振り飛車となった。
 「後手は金駒三枚で入玉を防げるのか?図」から、△5四金、▲2五飛、△2三歩!、▲3四成銀、△3三歩!、▲3五成銀、△5八銀、▲2三飛成で「ここで思い切った勝負手が出る!図」。金駒だけではなく、△2三歩!、△3三歩!で歩で拠点を作りながら、上下挟撃の形に持ち込んだ。残る持ち駒は金一枚。ここで後手の勝負手が出ます。次の一手は何でしょうか?

  「まずは桂馬が入玉阻止に働いた!図」   「そして香車が入玉阻止に働いた!図」
       

 「ここで思い切った勝負手が出る!図」からの次の一手は△7八金!。最後の金駒でなんと桂香を拾いにいった!攻め合いの展開ならまだしも、入玉を防ぐ駒として桂香は微妙な駒だ。相当うまい使い方がないと入玉阻止には働かない。△7八金!以下、▲6六角、△8九金、▲2五桂、△3四桂で「まずは桂馬が入玉阻止に働いた!図」。ここに桂馬が打てるのは大きい。以下、▲3七玉、△4四金、▲4五歩、△3五金、▲同 歩、△4六歩、▲3四歩、△4七歩成、▲3六玉、△3四歩、▲同 竜、△9九金、▲3三桂成、△3一香!で「そして香車が入玉阻止に働いた!図。今度は香車を好位置に据えた。以下、▲3二歩、△同 香、▲同成桂、△4三金、▲2三竜、△3四銀!で入玉阻止に成功した。
 △7八金!は勝敗を分けるほどの思い切った勝負手だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No5 2回戦-1

 先手 工藤 元四段(宮城) vs 後手 成田 豊文四段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「実戦詰め将棋を読み切るPart 1!」

 「ここから後手はどうやって決めるのか?図」「この実戦詰め将棋を読み切ってください!図」
       

 本局は大変珍しい「筋違い角」の一戦。後手がうまく対応して角得になっている。手番の後手は決め時なのだが、ここでの次の一手は難しい。まずはここで後手はどう指したでしょうか?
 正解は△5八銀!。守り金に働きかけた。以下、▲7七金、△5九銀成、▲7六金、△7八飛、▲4八銀、△4九銀、▲3七玉、△4八飛成、▲同 玉、△5八成銀、▲3七玉、△6四角、▲5五金で、「この実戦詰め将棋を読み切ってください!図」。これだけ金駒があれば簡単そうに見えるが、端歩の突き合いの関係で意外と読み切るのは難しい。この正解がないかもしれない実戦詰め将棋を読み切ってください。

 (変化)端歩のスペースを活かしての詰み!図」 (変化)「端歩を突いての突き歩詰め!図」
       

 「この実戦詰め将棋を読み切ってください!図」から、△5五同角、▲同 歩、△3八金、▲2六玉、△2五金、▲同 玉、△3三桂、▲3四玉、△4三銀、▲2三玉、△1二金!、▲2四玉、△1三金!で「(変化)端歩のスペースを活かしの詰み!図」。△1二金!〜△1三金!がちょっと分かりづらい詰み筋。端歩の突き合いがうまく活きている。また、途中の△3三桂に▲2六玉は、△2五金、▲1七玉、△2八銀、▲1八玉、△2九銀不成、▲1七玉、△1六金!、▲同 玉、△1五歩、▲2六玉、△3四桂!、▲1七玉、△1六歩で「(変化)端歩を突いての突き歩詰め!図」。△1六金!〜△3四桂!がこれまた盲点に入りそうな攻め。最後は端歩を突いての突き歩詰め。端歩の突き合いで先手玉はかなり広くなったが、後手も攻め筋をかなり増やした。いつも何気なく行っているが、端歩の付き合いは攻防のバランスを保つ手だとわかる。
 本譜は、「この実戦詰め将棋を読み切ってください!図」から、角を切らずに△3八金から寄せたが詰まず。先手の逆転勝ちとなった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No6 2回戦-2

 先手 工藤 俊介五段(青森) vs 後手 三浦雄一郎四段(宮城) 戦

この将棋はここが凄い! → 「実戦詰め将棋を読み切るPart 2!」

 「この△5六歩は手を抜けるのだろうか?図」「この△7六桂は手を抜けるのだろうか?図」
       

 相居飛車の終盤戦は相手の攻めを見切る「手抜き」が勝敗を分ける。
 まずは、「この△5六歩は手を抜けるのだろうか?図」を見ていただきたい。△5六歩と飛車の利きを消し次の△7六桂を見せている。場合によっては△5七歩成の攻めもある。先手はこの△5六歩を手抜いて攻め合いに出ても良いのだろうか。
 ここで先手は手抜いて▲5三銀!と攻め合いに出た。2筋を詰めているのが大きく、▲5三銀!〜▲6二銀成が早い。例えば、▲5三銀!、△7六桂、▲6二銀成、△5七歩成に▲7三角成が詰めろになる。▲5三銀!以下△5三同銀、▲同歩成、△同 金、▲5四歩、△6三金、▲7四銀、△7六桂で「この△7六桂は手を抜けるのだろうか?図」。ここで手が抜けるのなら▲6三銀成で先手の勝ち。しかし、よく見ると先手玉もかなり危ない。先手玉の危険度を読み切らないと▲6三銀成は指せない。今度は自玉に詰みが有るのか無いのか、この正解がないかもしれない実戦詰め将棋を読み切ってください。

  「詰み無しと見切っての▲6三銀成!図」  (変化)「詰みが無いなら△6九銀では?図」
       

 「この△7六桂は手を抜けるのだろうか?図」で先手玉に詰み無しと見切り先手は▲6三銀成!。以下、△8八銀、▲同 金、△同桂成、▲同 玉、△8七飛成、▲同 玉、△6九馬、▲7八桂、△8六歩、▲7六玉で「詰み無しと見切っての▲6三銀成!図」。やはり先手玉に詰みは無く、先手の勝ちとなった。途中の△8七飛で△8九金は▲8九同玉や▲7八玉は詰むのだが、▲9八玉でやはり不詰め。やはり「この△7六桂は手を抜けるのだろうか?図」で先手玉に詰みは無いようだ。
 しかし、▲6三銀成!自体は詰めろではない。ならば、詰ましにいくのでは無く△6九銀でどうだったか?この手は△7八銀成以下の詰めろなので、先手は受けなければならない。▲7六金と桂馬を外しても△7八銀成、▲同玉、△6七銀以下の詰み。では、▲8九金と受けても、△7八銀成、▲同金、△6九金、▲8九玉、△8八歩以下の詰みがある。先手の受けが難しいかもしれない。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No7 2回戦-3

 先手 鈴木 雄貴五段(青森) vs 後手 浅野 大輔四段(宮城) 戦

この将棋はここが凄い! → 「穴熊の猛攻を交わす!」

  「ここから穴熊の猛攻が始まる!図」   「もう少しで猛攻を交わせそうだが?図」
       

 「ここから穴熊の猛攻が始まる!図」から後手が穴熊が猛攻を始める次の一手は何でしょうか?
 正解は△5六銀!、いかにも穴熊らしい噛み付き方だ。以下、▲5六同金、△6七香、▲6八歩、△同香成、▲同 金、△同 竜、▲7七角、△3八竜、▲6七銀打、△6八金、▲5七馬、 △7八金、▲同 銀、△8五桂、▲4四角、△6九銀、▲6八金、△7八銀成、▲同 玉、△4八銀、▲5八馬、△5七歩、▲同金引、△同銀成、▲同 馬、△5六歩、▲同 馬、△5八金、▲6九歩、△6八金、▲同 歩、△4九竜で「もう少しで猛攻を交わせそうだが?図」。一手受け間違えればあっという間に寄せられてしまいそうな猛攻が延々続いた。何とか先手は受け切りそうだが、本当にぎりぎりだ。
 それでは、ここでの先手の次の一手、そしてその後の展開を考えてみてください。

 「角と馬が利いていて攻めが切れている?図」「ついに反撃に出た先手が勝ちきった!図」
       

 「もう少しで猛攻を交わせそうだが?図」からの次の一手は▲8六歩!と攻め駒を責めた。以下、△5八金、▲8五歩、△6九竜、▲8七玉、△6八金で「角と馬が利いていて攻めが切れている?図」。角と馬が受けに利いていて後手が攻めあぐねている、かに見てる。しかし、実はここでの次の一手を本当は見ていただきたい。先手の次の一手は何でしょうか?
 次に一手は▲8八金!。「神は細部に宿る」という言葉があるが、強いとはこういうことなのだろう。受け切っているように見えるで、先手はそろそろ反撃に出たい。しかし、「角と馬が利いていて攻めが切れている?図」では、後手から△6六歩!という手がある。▲6六同角、△6七金、▲4四角、△8九竜となるとまだまだ大変な局面になってしまう。受け切ったと思うような局面から歩一枚で手はあるものだ。▲8八金!はその望みを絶つ仕上げの一手だ。以下、△5八竜、▲5七歩、△6七金、▲9五歩で「ついに反撃に出た先手が勝ちきった!図」。満を持しての反撃で先手が勝ちきった。
 それにしても、▲8八金!と打てるかどうか?その違いはとてつもなく大きい。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No8 3回戦-1

 先手 成田 豊文四段(青森) vs 後手 山寺 清志五段(山形) 戦

この将棋はここが凄い! → 「成田四段の強さが分かる金の動き!」

 「まずは後手が穴熊らしい攻めに出る!図」 「今度は先手が穴熊の手筋を繰り出す!図」
       

 本局は相穴熊戦の手筋の応酬が見所だ。「まずは後手が穴熊らしい攻めに出る!図」からの後手の攻めを5手考えてください。
 後手は△8六歩、▲同 歩、△3九角成!、▲同 金、△6九金!と、強引に飛車先の突破を目指した。「角金交換金有利」は穴熊戦でのことわざではある。しかし、△6九金!は余程の清算がないとなかなか打てない。こんなところに金を打って、この後使えるのだろうか。後々のこの金の動きに注目していただきたい。△6九金!以下、▲4八角、△8六飛で「今度は先手が穴熊の手筋を繰り出す!図」。今度はここから先手の攻めを3手考えてください。

   「5筋の位を取ったらと金攻め!図」   「桂馬の金取りに悪手無し!図」
       

 「今度は先手が穴熊の手筋を繰り出す!図」から、▲5四歩、△同 歩、▲5二歩!で、「5筋の位を取ったらと金攻め!図」。相穴熊の将棋はと金を作れるかどうかが非常に大きい。特に、5筋に作ることが出来れば居飛車穴熊、振り飛車穴熊どちらにも効率の良い攻めができる。そう考えると、5筋の位を取るのは大きい。一方的に5筋の歩を切ることができるからだ。先手は▲5四歩〜▲5二歩!と「と金の卵」を作った。後手は△3一銀型であるので、卵が孵化すれば銀と交換できる。これは大きい。
 以下、△8九飛成、▲5一歩成、△9八竜、▲7五歩、△5五香、▲同 飛、△同 歩、▲4一と、△6五桂、▲6六歩で「桂馬の金取りに悪手無し!図」。先手は△5五香で飛車を殺されてしまったが、と金で銀を取れるので銀香と飛車との二枚換え。飛車を失っても、そんなに悪い話ではない。それだけと金を作ったのが大きいということだ。
 しかし、「桂馬の金取りに悪手無し!図」からの次の一手、△4七桂が効果的だった。桂馬で金取りをかけるには、相穴熊というよりもすべての将棋の終盤の基本だ。▲3八金で何もないようだが、それには△5七桂成!が激痛過ぎる。取りにいった桂馬が成り駒になる、そんな辛い話があるだろうか。△4七桂には▲4九金と玉から金が離れる不自然な受けしかなく、以下△9九飛、▲3一と、△同 金、▲6五歩、△6八金!、▲3八金、△5八金!と浮いている金を目標にされ、以下後手が勝ち切った。
 最後に△6八金!〜△5八金!に注目していただきたい。この金は△6九金!と思い切った位置に打った駒。そして、この将棋の最終手は△3九金!。金が一歩一歩相手玉に近づいていく姿に、成田四段の強さが伝わってくる。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No9 3回戦-2

 先手 工藤 俊介五段(青森) vs 後手 佐藤 智三段(山形) 戦

この将棋はここが凄い! → 「工藤五段のセンスの良い将棋!」

  「後手玉の弱点はどの筋だろうか?図」  「ここでのセンスの良い手は何だろうか?図」
       

 本局は当初は先手は雁木、後手は右四間飛車だったのだ。しかし、先手玉が右に逃げ込んだため、居飛車対振り飛車の対抗形のような形になった。では、「後手玉の弱点はどの筋だろうか?図」での先手の一手は何でしょうか?
 正解は、▲2六香!。「桂香持ったら、2六(8四)に打て!」は振り飛車の大事な心得だ。桂香は縦にしか攻められない駒なので、2六(8四)に据えるのが最も効果が高い。こういう手を見逃さないところに先手のセンスの良さがよく出ている。工藤五段はとにかくセンスが良い将棋。こういう将棋を見ていると、見ている方の気分も大変心地よくなる。▲2六香!以下、△1四歩、▲2五飛、△4七桂成、▲同 玉、△2四銀、▲4五飛、△5四馬、▲4六飛、△4四歩、▲6六飛、△6五歩、▲8六飛、△4五歩で「ここでのセンスが良い手は何だろうか?図」。ここでの次の一手を考えてみてください。正解はお分かりだと思いますが、次の一手の気持ち良さをぜひ味わっていただきたい。

  「先手は馬を作った次に目指すのは?図」 「馬を取られた後手はここで投了した!図」
       

 「ここでのセンスが良い手は何だろうか?図」からの次の一手は当然▲7三角!この手は、攻防によく利いている角を打ちながら「そちらは馬だけがよく働いているので、こちらも馬を作れば他の駒の分だけ良くなりますよね」という一手だ。以下、△9二香、▲5六銀、△7二金、▲2八角成!、△3五歩、▲4八玉、△3六歩で「先手は馬を作った次に目指すのは?図」。▲2八角成!と先手も馬を作って馬対馬になった。では、先手がここから決めに行くにはどうしたら良いか?それは、後手の馬にアタックして盤上から消しにいくこと。そうすれば、先手だけの馬が残り勝ちになる。「先手は馬を作った次に目指すのは?図」以下、▲5五銀!、△3七歩成、▲同 馬、△4六銀、▲同 銀、△同 歩、▲2四香、△4七銀、▲3九玉、△2四歩、▲5四飛!で「馬を取られた後手はここで投了した!図」。先手は▲5五銀!と馬取りをかけ、眠っていた大駒で▲5四飛!と馬を消すことに成功した。ここで後手は戦意喪失し投了となった。
 弱点を突いた攻めから、大駒をきれいに使い、相手の急所の駒を抜きに行く。工藤五段のセンスの良さがよく表れている将棋だ。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No10 3回戦-3

 先手 鈴木 雄貴五段(青森) vs 後手 増子 雅俊五段(山形) 戦

この将棋はここが凄い! → 「鈴木五段の抜群の構想力!」

 「桂馬の高飛びの後手は暴れるしかない!図」「ここで抜群の構想力の三手は何だろうか?図」
       

 「桂馬の高飛びの後手は暴れるしかない!図」以下、△5七歩!、▲2八飛、△5八銀、▲同 金、△同歩成、▲同 飛、△4七金、▲5六飛、△3七桂成!、▲同 桂、△1五角!で「ここで抜群の構想力の三手は何だろうか?図」。後手は△5七歩!からとにかく動いていき、△3七桂成!〜△1五角!とちょっと変わった筋で角の活用を図った。さて、ここで先手からの三手を考えていただきたい。これは難しい。ノーヒントで分かれば五段レベルだろう。さすがに難しすぎるのでヒントを二つ。「▲6五歩の位を活かす」「持ち駒の桂馬を活かす」どうでしょう?ぜひ考えてください。

 「桂馬の高飛びの後手は暴れるしかない!図」「ここで抜群の構想力の三手は何だろうか?図」
       

 美濃囲いに対しては「横からの攻め」「斜めの攻め」「縦の攻め」の三つがある。▲6五歩(△4五歩)の位を取ったら、その中の「斜めの攻め」が狙える。
 「ここで抜群の構想力の三手は何だろうか?図」から、▲9五歩!、△同 歩、▲5四歩!で「端を絡めての斜めの攻め!図」。この局面は、5筋を攻めている訳ではない。▲1一角成を狙っている訳でもない。狙いは美濃囲いへの斜め攻めである。以下、△3七角成、▲5三歩成、△4六金、▲5五角!で「すでに技が決まってしまっている!図」。結局、短手数で先手の勝利となった。
 こんなに簡単に将棋って決まるものなのか?目を疑いたくなる将棋だ。▲6五歩の位を取っての斜めの攻めという、鈴木五段の抜群の構想力がとにかく秀逸だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No11 4回戦-1

 先手 堀井厚太郎四段(福島) vs 後手 成田 豊文四段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「定番の手筋で局面をリードする!」

  「まずはここで相穴熊定番の手筋!図」   「今度はここで振り飛車定番の手筋!図」
       

 「まずはここで相穴熊定番の手筋!図」の先手からの三手を考えてみてください。
 ここから、▲5四歩!、△同 歩、▲5二歩!。5筋の位を取ったらと金攻め!は相穴熊の定番手筋。先手は5筋に「と金の卵」を作った。▲5二歩!に、△8一飛、▲7八飛、△6七歩で「今度はここで振り飛車定番の手筋!図」。後手も△6七歩と「と金の卵」を作ったが、後手は6筋な分だけ先手の5筋の方が一手早く働く「と金の卵」だ。ここら辺は先手が少し得をしている。では、ここでの振り飛車の手筋を考えてください。次の一手は振り飛車党が指をしならせて指すあの手です。どうでしょうか?

 「桂馬の華麗な跳躍は振り飛車の理想!図」  「先手の大駒が大活躍で先手優勢!図」
       

 「今度はここで振り飛車定番の手筋!図」から、▲7七桂、△8六角、▲6五桂で「桂馬の華麗な跳躍は振り飛車の理想!図」。なんて素敵な桂馬の華麗な跳躍でしょう。さらに、ここに桂馬が飛ぶことは桂交換に持ち込む意外にも、大きな意味がある。以下、△6五同桂、▲7四飛!、△6八歩成、▲7二飛成!、△4一飛、▲6五歩、△5八と、▲8四角!で、「先手の大駒が大活躍で先手優勢!図」。△6五同桂に▲7四飛!〜▲7二飛成!と飛車取りの先手で飛車を活用し、その後、悠々と▲6五歩で桂馬を取り返す。そして、後手の期待の△5八とに▲8四角!と今度は角を敵陣に利かせる。▲6五桂〜▲6五歩は角の活用を図る一手でもあったのだ。相穴熊は大駒の活躍度が優劣に直結する。飛車が使えない後手にとって、苦しすぎる局面になっている。
 先手は、と金作りから桂馬の跳躍と手筋を駆使し、そして見事な大駒の活用と相穴熊の理想の戦い方だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No12 4回戦-2

 先手 坂井 徹四段(福島) vs 後手 工藤 俊介五段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「局面のちょっとした違いを活かす!」

「ここから後手はリーチの長い攻めに出る!図」「先手の角打ちに後手はどう対応する?図」
       

 「ここから後手はリーチの長い攻めに出る!図」は、後手の一段金、△4三歩型や9筋の突きこしが通常と少し変わっている。これらがどう影響するのだろうか?それではここでの後手の一手を考えてみてください。
 次の一手は△9三桂!。やはり強い人の攻めはリーチが違う。6筋が争点となっているのに9筋から桂馬が飛んでくる。ボクシングで言えば、間合いをとっているつもりなのに視界の外から突然フックが飛んでくる感じ。以下、▲4五歩、△6五歩、▲4六角で「先手の角打ちに後手はどう対応する?図」。自陣にあまり手を加えていない分、後手は先攻することができた。▲4六角と攻めを受けて立つ形は、先手としては少し悔しいかもしれない。
 「先手の角打ちに後手はどう対応する?図」で後手は角打ちにどう対応したでしょうか?局面のちょっとした違いを活かして優勢に持ち込みます。

    「後手は飛車取りが怖くない!図」     「金で角を殺して後手優勢!図」
       

 「先手の角打ちに後手はどう対応する?図」から、△8五桂!、▲7三角成、△7七桂成!、▲同 金、△6四角!で「後手は飛車取りが怖くない!図」。相居飛車では、通常上部からの攻めに備えて二段金になっていることが多い。そこで、飛車を取られると自陣が崩壊してしまう。だから、飛車の価値が非常に高い。しかし、本局の後手は一段金。飛車を取られても簡単には崩れない。そこで、飛車を攻められても手抜きが利く。△8五桂!〜△7七桂成!〜△6四角!と、角打ちに対する強気の対応で優勢に持ち込んだ。
 以下、▲6四同馬、△同 飛、▲8二角、△6一飛、▲4六桂、△6六歩、▲6四歩、△6二金!、▲3五歩、△同 歩、▲6六金、△7二金!で「金で角を殺して後手優勢!図」。斜め駒の角銀は、縦横駒の飛車金に攻められると弱い。後手は守りの金を△6二金!〜△7二金!と使い角を殺した。守りの金が玉から離れていく意表の手順だ。
 後手は、一段金を活かして先攻し、飛車取りを恐れず攻め合いに持ち込んだ。また、予想外の金の動きを見ても、形にとらわれない指し回しが印象的な将棋だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No13 4回戦-3

 先手 鈴木 雄貴五段(青森) vs 後手 小野内一八四段(福島) 戦

この将棋はここが凄い! → 「終盤の攻防が凄すぎる!」

  「対右玉にはどう考えたら良いのか?図」  「広い後手玉を捕まえるためには?図」
       

 「対右玉にはどう考えたら良いのか?図」は、振り飛車対右玉の局面。対振り飛車に右玉はたまに見られる作戦だ。しかし、振り飛車党にとって、右玉は違う世界の戦法という感じがどうしてもする。だから、何をして良いのかわからない!と感じている間に、右玉の術中にはまってしまう。不用意に攻め込んで見事に反撃されたり、広い玉に逃げ回られて捕まえられなかったりする。「こういう将棋を指したい訳じゃないんだって!」と心の中で何度もつぶやいてしまう。
 対右玉にはとにかく強気に攻めるのが一番。「対右玉にはどう考えたら良いのか?図」以下、▲7五歩、△同 歩、▲7六歩、△同 歩、▲同 金、△7四歩、▲9五歩、△同 歩、▲7五歩、△同 歩、▲同 金、△7四歩、▲9二歩、△7五歩、▲9一歩成、△同 飛、 ▲7五飛、△8四金、▲9五角、△7五金、▲7三角成、△同 玉、▲9一香成、△3三角で「広い後手玉を捕まえるためには?図」。先手は後手の弱点の桂頭と端を激しく攻めた。右玉はとにかくこここを攻めるしかない。この強気強気の攻めを、長い手順だがぜひ見ていただきたい。確かに駒損の攻めだが、玉の安定度の違いで先手が指せている。
 しかし、大変なのはここから。不安定に見える玉も実力者が持てば、広い玉ということもできる。とりあえず駒をさばいた先手はこの後どうした良いでしょうか。先手からの三手を考えてみてください。

「挟撃が出来上がり先手が寄せ切りそう?図」 「大駒の受けで後手は簡単に崩れない!図」
       

 「広い後手玉を捕まえるためには?図」から、▲8五桂!、△6二玉で後手玉を自陣に押し戻し、以下、▲3四香!、△4二角、▲2二飛で「挟撃が出来上がり先手が寄せ切りそう?図」。一番怖い入玉を阻止する▲8五桂!。この桂馬が要の駒。そして、後手陣に押し戻した後は反対側から▲3四香!と攻める。そして、▲2二飛で挟撃体勢が出来上がり終局近しを思わせたが…。本局の本当の見せ場はここから。後手がそうは簡単には決めさせない受けを連発する。
 「挟撃が出来上がり先手寄せ切れそう?図」から、△6一飛!、▲3二香成、△1三角!、▲2三飛成、△8四歩!で「大駒の受けで後手は簡単に崩れない!図」。△6一飛!や△1三角!という大駒の受けを見ると、「受けに使えない駒は無い!」という大山康晴の金言が聞こえてきそうだ。そして、△8四歩!と要の桂馬を攻める。これがいなくなると後手玉の上部が随分と広くなる。この後、後手が決め手を与えず、終局まで110手程かかることとになった。
 将棋って決めるのにこんなに大変なのか?目を疑いたくなる将棋だ。右玉の玉の広さを大いに活用する、小野内四段の決め手を与えない強靭な粘り腰がとにかく秀逸だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No14 5回戦-1

 先手 佐藤 郁人三段(岩手) vs 後手 成田 豊文四段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「こんな囲いは見たことない!」

 「後手の囲いは一体何枚の守りなのか?図」  「舟囲いの急所はどこだろうか?図」
       

 「後手の囲いは一体何枚の守りなのか?図」の後手の囲いを見ていただきたい。こんな囲いはめったにお目にかかれない。金駒3枚に大駒3枚が密集している。馬一枚で金駒3枚分の守備力があるというが、これは一体何枚の守りと数えるのだろうか?しかし、その分後手は攻撃力に欠ける。先手陣は手厚い舟囲いになっていて、固いまではいかないが急所を攻めないと崩れない。一体、どこから手を作れば良いのだろうか?
 「後手の囲いは一体何枚の守りなのか?図」から、△7四歩!、▲3三と、△4一竜、▲3四馬、△6四飛、▲2三馬、△6一竜、▲3二馬、△2四飛、▲4二と、△6二金寄、▲3三馬、△2一竜、▲2二歩、△同 竜、▲同 馬、△同 飛、▲5一と、△2九飛成、▲6四香で「舟囲いの急所はどこだろうか?図」。金取りをかけられた後手は、そろそろ攻め合いに出なければいけない。ずっと前から狙っていた後手の次の一手は何でしょうか?舟囲いの急所を突きます。

 「舟囲いの急所は△7五歩(▲3五歩)!図」「金取りがかかり後手がペースをつかんだ!図」
       

 「舟囲いの急所はどこだろうか?図」から、△7五歩で「舟囲いの急所は△7五歩(▲3五歩)!図」。舟囲いは玉頭が手薄なのに、角道を通すためどうしても▲7六歩(△3四歩)突いてしまう。だから、振り飛車は△7五歩(▲3五歩)を入れれば、それだけで囲いを大きく崩せる。△7五歩以下、△7五歩、▲5九香、△7六歩、▲同 銀、△7七歩、▲同 玉、△8四桂、▲8五銀、△7六歩、▲7八玉、△7三馬、▲6二香成、△同 馬、▲8六金、△7七桂!で「金取りがかかり後手がペースをつかんだ!図」。△7五歩から、無傷だった先手の囲いが大きく切り崩されてしまった。△7七桂!と金取りがかかると先手も苦しい。
 最初の「後手の囲いは一体何枚の守りなのか?図」では先手も後手も無傷な囲いだったが、後手がうまく先手陣の急所を突いた将棋だった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No16 5回戦-2

 先手 工藤 俊介五段(青森) vs 後手 岩泉 毅五段(岩手) 戦

この将棋はここが凄い! → 「こんなしつこい攻めは見たことない!」

 「先手の雁木はこの後、どう進展する?図」「ここで後手はとにかくしつこい攻めに出る!図」
       

 「先手の雁木はこの後どう進展する?図」を見ていただきたい。先手はこの後、どういう方針で指すべきだろうか?
 雁木は自由度が高い戦法だ。先攻する場合もあるし、囲いを進展させる場合もある。玉を固める囲いというより、相手の陣形次第で変化できる構えと言った方が良いのかもしれない。
 後手は非常に低い構えをしている。だから、喧嘩のしようもない。そこで、先手は囲いを進展させるさせることになる。低い構えに対しては、どんどん上部へ進展できる。以下、▲6五歩、△3三角、▲6六銀右、△4一玉、▲7八金、△3一玉、▲7五歩、△8六歩、▲同 歩、△同 飛、▲8七歩、△8二飛、▲6九玉、△5三銀右、▲7六銀、△4四歩、▲5八金、△4五歩、▲6七金右、△4三銀、▲7七角、△3五歩、▲7九玉、△5二金、▲8八玉、△9四歩、▲9六歩、△2二玉、▲1六歩、△1四歩、▲4八飛で、「ここで後手はとにかくしつこい攻めに出る!図」。先手の囲いを見ていただきたい。まあなんと手厚い囲いでしょう。二枚並んだ鉄壁の銀が、玉を守る金をしっかり隠している。こんな囲い見せられたら、攻める気が失せるのが普通だ。
 しかし、ここから後手は敢然と先手陣に襲いかかる。それはまあしつこくしつこく攻めをつなげ、なんと攻め倒してしまう。その信じられない後手の攻めを考えてみてください。

「角道が通っていて後手の攻めがうるさい!図」「後手のしつこい攻めを先手受け切ったか?図」
       

 「ここで後手はとにかくしつこい攻めに出る!図」から、△6四歩!、▲同 歩、△7四歩!、▲同 歩、△9五歩!、▲同 歩、△6四銀、▲6五歩、△7五歩、▲6四歩、△7六歩、▲同 金、△8五銀!、▲6五銀打、△8六歩!で「角道が通っていて後手の攻めがうるさい!図」。後手の攻め駒は飛角銀のわずか3枚。上部に盛り上がられているので、桂馬の活用は難しい。そんな状態で鉄壁の先手陣に攻め入るなんて、普通は到底考えられない。しかし、よく見てみると後手の角が抜群の働きをしている。通常、居飛車戦で角のラインに相手玉がいるなんてことはない。お互いに縦の攻めを警戒して、△3三角型にはならない。しかし、本局は先手が縦から攻める気配がないので、後手の角が斜めに素晴らしい利きをみせている。当然、飛車が縦に利いているので、二つの利きが玉に向かっている。これだけ条件がよければ3枚の攻めも通せなくはない。△6四歩!〜△7四歩!〜△9五歩!と歩を3枚も突き捨て、△8五銀!〜△8六歩!と角道を活かして攻めた。△8五銀!に▲8五同金には△7六歩がある。角道が通っていて攻めの筋が格段に増えている。
 「角道が通っていて後手の攻めがうるさい!図」以下、▲5五歩!、△8七歩成、▲同 金、△8六歩、▲同金寄、△同 銀、▲同 金、△6七金、▲8三歩!、△同 飛、▲8四歩!、△同 飛、▲8五歩!、△8二飛、▲1八飛!、△5五歩、▲6八銀!、△7七金、▲同銀上で「後手のしつこい攻めを先手受け切ったか?図」。先手は、角道を止めるべく▲5五歩!から凌ぎにいった。そして、▲8三歩!〜▲8四歩!〜▲8五歩!と連打で先手を取り、▲1八飛!と目標にされそうな飛車を逃がし、、▲6八銀!と攻め駒を消しにいった。攻め駒の利きを止めに行く、先手で受ける、自陣の駒を攻めさせない、攻めの種駒をなくす。受けの基本を繰り返せば、そう簡単に攻め倒されることはない。本局では、工藤五段のいつもの「攻めのセンス」ではなく、「受けのセンス」を感じ取ることができる。
 それでも、後手はそう簡単に許してはくれない。以下、△5三金からしつこく手をつなげて後手が最終的に押し切った。本当にしつこい後手の攻めだった。

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<第60回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No15 5回戦-3a,3b
千日手局
 先手 鈴木 雄貴五段(青森) vs 後手 小山 怜央六段(岩手) 戦
指し直し局
 先手 小山 怜央六段(岩手) vs 後手 鈴木 雄貴五段(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「こんな破壊力は見たことない!」

「▲3六歩に後手は先手の手を消しに行く!図」「ここから先手は指したい手ばかり指す!図」
       

 「▲3六歩に後手は先手の手を消しに行く図」で、次の▲3五歩を見せられた後手は、△7二飛。以下、▲4六角、△4二角、▲7八飛、△8二飛、▲7六飛、△7二飛、▲7八飛、△8二飛、▲7六飛、△7二飛、▲7八飛、△8二飛、▲7六飛、△7二飛で後手が相手の手を消しにいっての千日手。
 そして、指し直し局の「ここから先手は指したい手ばかり指す!図」。ここからの5手を考えていただきたい。先手が一方的に指したい手ばかり指して優勢に持ち込みます。

  「攻防に指したい手は全部指した!図」    「これはアマ名人の穴熊の暴力!図」
       

 「ここから先手は指したい手ばかり指す!図」から、▲5一角!、△4三飛、▲7九銀右!、△5五歩、▲5六歩!で「攻防に指したい手は全部指した!図」。▲5一角!で後手に形を決めさせて、▲7九銀右!と玉を固め、▲5六歩!で本格的に戦闘開始。先手は攻めにも守りにも指したい手は全部指した。後は、穴熊を頼りに激しく攻めるだけ!以下、「攻防に指したい手は全部指した!図」以下、△4四角、▲5五歩!、△同 銀、▲同 飛!、△同 角、▲5二銀!、△5三飛、▲4二角成、△6二金引、▲5三馬、△同 金、▲6一銀不成で「これはアマ名人の穴熊の暴力!図」。▲5五歩!〜▲同 飛!〜▲5二銀!は穴熊とはいえいくらなんでも無理そうな…と感じるが、良く考えてみてほしい。これは、「アマ名人の穴熊の暴力」なのだ。「アマ名人の穴熊の暴力」、なんと恐ろしい響きの言葉だ。「これはアマ名人の穴熊の暴力!図」は、7筋の歩が切れている、守りのエースの金取りをかけている、持ち歩が何枚かある。これだけ条件が揃えば、飛銀の2枚の攻めでも通るということなのだろうか?以下、先手が攻め勝った。
 それにしても、アマ名人の破壊力は凄まじい。あの鈴木五段が押し切られるとは。なんともあきれる破壊力だった。

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<了>

文責 阿部浩昭

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