第61回東北六県将棋大会

今年度出場選手

 青森  
大将 船橋隆一 副将 鈴木雄貴 先鋒 工藤俊介
 岩手  
大将 小山怜央 副将 岩泉 毅 先鋒 藤谷明弘
 秋田  
大将 佐藤弘康 副将 堀井邦明 先鋒 鈴木勝裕
 宮城  
大将 阿部駿弥 副将 越後雅邦 先鋒 星宮 謙
 福島  
大将 濱口敦也 副将 花井秀隆 先鋒 小野内一八
 山形  
大将 山寺清志 副将 松田樹雄 先鋒 上野伸一

<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No1 1回戦-1

 先手 藤谷明弘(岩手) vs 後手 工藤俊介(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「振り飛車の間!」

  「ここで大山康晴流の次の一手は?図」   「振り飛車の間をはかる一手は?図」
       
 「ここで大山康晴流の次の一手は?図」から、後手は△3二金!。急戦に対しての振り飛車の△3二金!は正に大山康晴流。大名人が好んで指した一手だ。これで右辺からの急戦に備えることができるのだが、難しいのはここから。後手は金駒が左右に分裂してまとめるにはかなりの力が必要だ。△3二金!以下、▲4六歩、△5二銀、▲3七桂、△6四歩、▲4七銀、△6三銀左、▲1六歩、△7四歩、▲2九飛、△1四歩、▲5五歩、△同 歩、▲同 角、△5二飛、▲8八角、△4三金、▲5六銀右、△7三桂、▲5五歩で「振り飛車の間をはかる一手は?図」。先手は当然、金駒が少ない中央から動いて行く。そして、中央に位を築くことに成功した。
 しかし、振り飛車はリアクション将棋。相手に動いてもらうのは大歓迎だ。問題はそのタイミング。反撃するベストのタイミングを見極めるのが振り飛車の極意。「振り飛車の間をはかる一手は?図」からの次の一手を考えてみてください。

 「後手が反撃のタイミングをつかんだ!図」 「桂馬が攻めに参加し攻めがうるさい!図」
       
 「振り飛車の間をはかる一手は?図」からの次の一手は△1三香!。これは反撃の間をはかりながら、△1二飛からの動きを見せている。先手は桂馬が跳んでいるので、端が弱い。そこで、先手は何かしなければいけなくなり、▲4九飛。以下、△3五歩!、▲4七金、△3六歩、▲同 金、△5四歩!で、「後手が反撃のタイミングをつかんだ!図」。飛車が動いて▲2六飛がなくなったので、△3五歩!と桂頭を攻める。そして、金を引っ張り出してから、△5四歩!とついに本格的な攻めを開始した。
 「後手が反撃のタイミングをつかんだ!図」以下、▲4五歩、△5五歩、▲同 銀、△5四金、▲5六歩、△6五桂、▲6六銀上、△5五金、▲同 銀、△5七銀で「桂馬が攻めに参加し攻めがうるさい!図」。以下、▲6九金、△5五飛、▲同 角、△5八銀打で、後手が完全に食いついている。
 動きをみせながら、相手に動かさせる振り飛車の間の取り方が見事な将棋だった。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No2 1回戦-2

 先手 岩泉 毅(岩手) vs 後手 鈴木雄貴(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「居飛車穴熊の踏み込み!」

  「ここで居飛車穴熊が一歩踏み込む!図」「さらに居飛車穴熊がもう一歩踏み込む!図」
       
 まずは、「居飛車穴熊が一歩踏み込む!図」からの次の一手を考えていただきたい。
 ここで先手は▲6五歩!と突いた。これは、先手の角の働きを考えた一手だが、同時に後手の角も働いてくる諸刃の剣。お互いの角は相手の玉を睨んでいる。なんとも踏み込んだ一手だ。以下、△6五同歩、▲7五歩、△同 歩、▲同 飛!、△6二飛、▲6五飛!、△5五歩で「さらに居飛車穴熊がもう一歩踏み込む!図」。先手は▲7五同飛!〜▲6五飛!を狙っていた。ここで先手はさらに踏み込んだ一手を指す。その手を考えてみてください。

 「駒損し、手番を渡してもそれでも互角!図」  「踏み込みが功を奏し先手優勢に!図」
       
 「さらに居飛車穴熊がもう一歩踏み込む!図」からの次の一手は▲6三飛成!。飛車金交換金有利と踏み込んだ。以下、△6三同飛、▲6六銀!で「駒損し、手番を渡してもそれでも互角!図」。飛車を切った後は悠然と▲6六銀!。駒損して、さらに手番を渡しても十分やれるという大局観だ。この局面を見せられればまあ互角とは思えるが、実際にこんな展開に踏み込めるだろうか?この手順を見ると、「居飛車穴熊の踏み込み恐るべし!」としか言いようがない。
 以下、△7二金、▲6四歩、△6一飛、▲6三金、△同 金、▲同歩成、△同 飛、▲6四歩、△同 飛、▲7七金!、△5四銀、▲5五歩!、△6三銀、▲7五金で、「踏み込みが功を奏し先手優勢に!図」。金駒を削りながら飛車角を攻め▲7七金!で再び手を渡し、△5四銀を誘って▲5五歩!以下、先手優勢になった。踏み込んだ後に何度か手を渡しても、それでも戦える居飛車穴熊の優秀さがわかる一局だった。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No3 1回戦-3

 先手 船橋隆一(青森) vs 後手 小山怜央(岩手) 戦

この将棋はここが凄い! → 「アマ名人の閃き!」

 「ここから強気の受けで後手が優勢に!図」  「ここでのアマ名人の閃きが凄い!図」
       
 「ここから強気の受けで後手が優勢に!図」から、△2三玉!、▲6八角、△2四歩!、▲1五香、△1四歩!と、玉を使い強気に受けた。以下、▲1二歩成、△同 香、▲1三歩、△同 桂、▲同桂成、△同 香、▲7九玉、△1五歩、▲2五歩、△1六歩!、▲2六桂、△2五歩、▲4九銀、△5八歩!、▲同 飛、△4九馬!、▲5四飛、△同 銀、▲2四銀、△2二玉、▲3四桂、△3一玉、▲5五歩で「ここでのアマ名人の閃きが凄い!図」。桂香を攻めた後は△1六歩!から入玉を見せる。先手を慌てさせ▲4九銀を誘い、△5八歩!〜△4九馬!で銀得となった。駒損した先手は、▲5四飛と飛車銀交換し動いていくしかない。これで後手の飛車得と大きな駒得となった。
 そして、「ここでのアマ名人の閃きが凄い!図」。ここからの後手の一手は常人の想像を超えている。正直、善悪もわからない。ただただ、「アマ名人の閃き!」はすごいなあと驚嘆するだけである。さあ、次の一手が閃きますか?

  「常人の想像を超えた驚嘆の寄せ!図」  「今度は端をつめて角を放り込んだ!図」
       
 
「ここでのアマ名人の閃きが凄い!図」からの次の一手は△6九銀!。以下、▲6九同玉、△3九飛、▲4二桂成、△同 金、▲5九金、△5八歩で「常人の想像を超えた驚嘆の寄せ!図」。△6九銀!、これは一体全体何なんでしょう!こんなところに銀を放り込むんですか!ただで取られるじゃないですか!大きな駒得後の金取りだからこんな手が成立するのだろうか?。これで寄っていると判断するとは、ただただ驚嘆するばかりだ。
 以下、▲7九玉、△5九馬、▲8八玉、△6八馬、▲同金引、△9五歩、▲5四歩、△9六歩、▲9八歩、△9七角で「今度は端をつめて角を放り込んだ!図」。▲7九玉の早逃げに△5九馬〜△6八馬。これは、と金は作らずとも寄せられるという判断だ。そして、端をつめた後は△9七角と放り込む。これは、△8五桂と金駒を攻める必要はないという読みだ。
 もうこの将棋は「アマ名人の閃き!」はすごいなあと驚嘆するしかない。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No4 2回戦-1

 先手 工藤俊介(青森) vs 後手 小野内一八(福島) 戦

この将棋はここが凄い! → 「玉が薄くても気になりません!」

  「ここから先手は強気に動いていく!図」  「桂馬の金取りにどう対処すべきか!図」
       
 「ここから先手は強気に動いていく!図」から、先手は動いていく。以下、▲4五歩、△同 歩、▲同 銀、△4四歩、▲7四歩、△同 銀、▲5四歩、△6五歩、▲3七角、△7二飛、▲5三歩成、△同 金、▲7六歩、△6六歩、▲7五歩、△6七歩成、▲同 金、△7六歩、▲5三飛成、△7七歩成、▲5一竜、△2二玉、▲7七金、△6五桂で「桂馬の金取りにどう対処すべきか?図」。先手は▲4五歩から動き、中央を攻めた。途中に7筋から動いて来たのを利用して▲7四歩で銀を中央からそらし、見事に中央を突破した。軽快に動いているように見えるが、これだけ激しく動けば反動も大きい。ついに△6五桂と桂馬の金取りがかかった。さあ、先手はどうするか?
 そういえば、工藤五段と依然会話したときに、「玉が薄くても気になりません!」と言っていたことがあった。次の一手を見るとこういうところなんだろうなあと感じる。

「逃げ込みを阻止され先手は攻め合いに!図」 「終盤にはこんな妙手が隠れている!図」
       
 
「桂馬の金取りにどう対処すべきか?図」からの次の一手は▲5八玉!。これは金取りを放置して右辺に逃げ込む一手だ。「玉が薄くても気になりません!」というのはこういうところからよくわかる。堅い囲いを愛好する人からすると、金取りを掛けられたら金を逃がすか金駒を埋める手を考える。玉が薄い場合は、その他に玉をかわす受けが存在する。▲5八玉!以下、△4五歩、▲2四歩、△4六銀、▲同 角、△同 歩、▲2三歩成、△同 金、▲5四角で「逃げ込みを阻止され先手は攻め合いに!図」。
 しかし、先手の意図を後手はもちろん承知している。そこで、△4五歩〜△4六銀〜△4六同歩と、先手の右辺逃げ込みを阻止した。それではと、その間に先手は攻め合いに持ち込む。ついに「逃げ込みを阻止され先手は攻め合いに!図」で後手玉に詰めろがかかった。この局面は後手も怖いが、角で竜の守りが消え大きなチャンスだ。以下、△5七銀、▲5九玉、△6七桂!で「終盤にはこんな妙手が隠れている!図」。△6七桂!を▲6七同金は、△9五角で竜が取られてしまう。最終盤でこれほどの手を指されては一たまりもない。△6七桂!以下、▲6九玉、△6八歩、▲7八玉、△7七桂成、▲同 玉、△4四角、▲5五歩、△同 角、▲6六歩、△同銀成、▲6八玉、△5七金まで後手の勝ちとなった。
 薄い玉でかわす受けをやってみたい気もする。しかし、妙手一発であっという間に寄せられてしまうと、やっぱりこういうのは大変だなあと感じてしまう。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No5 2回戦-2

 先手 花井秀隆(福島) vs 後手 鈴木雄貴(青森) 戦

この将棋はここが凄い! → 「角換わりは角打ちが命!」

  「ここで右玉が位を目標に動いていく!図」   「本局はここが本当の勝負所!図」
       
 
「ここで右玉が位を目標に動いていく!図」から、後手の位に向かって動いていく。後手は玉の堅さ重視なので、位を維持している金駒が一枚しかない。ここがねらい目と6筋から動く。▲6六歩、△同 歩、▲同 銀、△8五歩、▲7八金、△2二玉、▲6九飛、△6二飛、▲7七桂、△7四歩、▲6五銀で「本局はここが本当の勝負所!図」。後手玉は確かに堅い。しかし、先手から▲2五桂や▲4一銀を狙われている。ここでの対応を誤るとあっという間に持っていかれる。
 さて、「本局はここが本当の勝負所!図」からの後手を一手を考えてください。慎重に次の一手を考えてください。

  「ここで右玉が位を目標に動いていく!図」   (仮想図)「以下、後手玉は詰み!図」
       
 
「本局はここが本当の勝負所!図」から、まずは△6五同銀から考える。以下、▲6五同桂、△7三桂、▲6六歩、△6五桂、▲同歩でどうか?この後、△6一飛、▲6四歩、△6六歩、▲2五桂、△2四銀、▲5五角!で先手指せている感じがする。途中の△6一飛は▲4一銀の防ぎ。また、△6六歩に▲6六同飛は△8四角!、▲6九飛、△6六桂で金の両取りがかかり、これは後手が良い。こう見ていくと、▲5五角!や△8四角!とうまく角が打てると局面が好転する。「角換わりは角打ちが命!」なのだ。
 遡って、「本局はここが本当の勝負所!図」からの次の一手は△6六歩。これを▲6六同飛は、先ほどの変化で▲6六歩と打てない。それに、どこかで△8四角!と先手で角を打たれてしまう。角換わりでは好位置に角を打たせてはいけない。そこで、△6六歩以下、▲5四銀、△同 歩、▲6五歩、△6七銀、▲同金左、△同歩成、▲同 飛、△7八角、▲6八飛、△8七角成で「馬ができてこれは後手が優勢になった!図」。こうなってしまうと、先手の指しようがない。以下、後手が勝ち切った。
 では、手段はなかったのか?と、コンピューター(以下、コン君)で調べてみた。すると驚きの手順を発見した。途中の▲6五歩は△6七銀と打たれるのを防いで当然に見えたが、コン君によるとここは▲4一銀と強気にでるそうだ。以下、当然の△6七銀に▲9五角!。以下、△7八銀不成、▲6二角成、△6九銀不成、▲3二銀成、△同玉、▲5二馬、△5八銀不成に▲4三金で、(仮想図)「以下、後手玉は詰み!図」。これで後手玉が詰むようだ。やはり▲9五角!と飛車取りに打てるのが大きい。角換わりでは常に端の交換を入れるのは、角を打つ場所を減らす意味があるのかもしれない。「角換わりは角打ちが命!」、うまく角を使えた方が優勢になる!
 それにしても、△6七銀とは普通の人だったら絶対に打たせない。だって、人間だもの!その後を読むコン君は怖いもの知らず。失うことを全く恐れていない!ところで、(仮想図)以下、詰ますことはできましたか?

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No6 2回戦-3

 先手 船橋隆一(青森) vs 後手 濱口敦也(福島)

この将棋はここが凄い! → 「攻めのかわし方!」

 「どうやって後手の攻めをかわすのか?図」   「金取りをかけられどうかわすのか?図」
       
 「どうやって後手の攻めをかわすのか?図」は、△9六歩を狙われている。そこで、▲7四歩、△同 銀と歩を使って手を稼いだ。以下、▲9四歩、△8六歩、▲9三歩成、△8四飛、▲8六歩、△9六歩、▲同 香、△8六飛、▲9七歩、△7六歩、▲8七歩、△8四飛、▲7六金、△4二角、▲7七角、△6二金、▲9二と、△7五銀、▲同 金、△同 角、▲7六歩、△5三角、▲3七桂、△5五歩、▲同 角、△3四飛、▲3五歩、△5四飛、▲9一と!、△8五桂、▲8二角成!、△7七歩で「金取りをかけられどうかわすのか?図」。この手順を見ると、後手は手数多く攻めているにもかかわらず、先手に当たっている感じがしない。少しずつポイントをかわしている感じ。
 では、「金取りをかけられどうかわすのか?図」では、先手はどう対応するでしょうか。ここからの三手を考えてみてください。

「金取りに先手はかわす受けで対応した!図」 「田楽刺しを避けたが▲8五香!がピッタリ!図」
       
 終盤での攻める側のポイントは「金取りのかけ方」なら、受ける側のポイントは「金取りへの対応の仕方」だ。終盤の金取りの場面を見れば、その人の力量がわかる。
 「金取りをかけられどうかわすのか?図」から、▲6七金!、△7八歩成、▲5八玉!で「金取りに先手はかわす受けで対応した!図」。先手は▲6七金!〜▲5八玉!と後手の攻めをかわし続けた。
 金取りに対しては、1「攻め駒を取る」、2「金駒を埋める」、3「攻めをかわす」がある。この局面では、後手が唯一攻め破れる9筋から遠ざかる、▲5五香の田楽指しを見せて後手を焦らせているということから、先手は3「攻めをかわす」を選択した。そのために、中央を手厚くして玉が逃げ込む場所を作っている、▲9一と!〜▲8二角成!と▲5五香の筋を作っておいたという下準備も見逃せない。
 「金取りに先手はかわす受けで対応した!図」から、△7七桂成、▲同 桂、△8四飛、▲8五香!で「田楽指しを避けたが▲8五香!がピッタリ!図」。△8四飛と田楽刺しを避けながら、馬取りと飛車成りを狙った手が良さそうに見えたが、▲8五香!がピッタリすぎる。以下、先手が勝ち切った。
 受ける側の「金取りへの対応の仕方」を、ぜひ鑑賞していただきたい。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No7 3回戦-1

 先手 鈴木勝裕(秋田) vs 後手 工藤俊介(青森)

この将棋はここが凄い! → 「攻めを加速する受け!」

  「後手は金取りをどうやって受ける?図」   「後手は銀取りをどうやって受ける?図」
       
 「後手は金取りをどうやって受ける?図」は、飛車と金桂の二枚換え、そして玉型の違いで後手が優勢な局面。では、どうやって勝ちに結び付けるのか?
 後手の次の一手は△7一金!と金取りを受けた。この手は受けの手に見えて、実は攻めを速める意味もあるのだが、それは後程。
 △7一金!以下、▲9一飛成、△8一金、▲同 竜、△2二玉、▲2四歩、△同 歩、▲6五桂!、△1八馬、▲2三歩!、△同 金、▲4一竜で「後手は銀取りをどうやって受ける?図」。歩く切れの先手は▲6五桂!で一歩を手に入れ▲2三歩!と急所を攻めた。これは苦しそうな先手の勝負手と言えるだろう。後手は駒得とは言え、受けの持ち駒がない。この銀取りはかなり受けづらい。
 それでは、ここで後手の次の一手を考えてみてください。

「後手に駒を与えると先手玉は詰んでしまう!図」「このタイミングで後手玉に詰みがあった!図」
       
 「後手は銀取りをどうやって受ける?図からの次の一手は、なんと△3六馬!。この手は、銀取りを放置しても指したい急所の一手。この手が入ると、先手玉が急に危うくなる。最初に△7一金!と打ち先手の角を取りに行ったのは、角がいなくなれば△3六馬!と引けるからだった。△7一金!は「攻めを加速する受け!」だった。△3六馬!以下、▲4二竜、△1三玉!、▲3二銀、△2二金!で「後手に駒を与えると先手玉は詰んでしまう!図」。△1三玉!〜△2二金!は自玉の安全度を見切り、駒をもらったら詰ましますよという何とも強気の受け。例えば、△2二金!に対して、▲2三金、△同金、▲同銀成、△同玉、▲2二金、△1三玉、▲3二竜とすれば後手受けなしになるが、それは、△6九馬以下先手玉が詰んでしまう。やはり、△3六馬!がいると、途端に詰み筋が増えてくる。
 「後手に駒を与えると先手玉は詰んでしまう!図」以下、▲3一銀不成、△1二金、▲2二金、△6九馬、▲同 玉、△8九飛、▲7九金、△4七角、▲7八玉、△5六角成、▲6七角、△同 馬、▲同 玉、△8七飛成、▲7七角!、△3三角!で「このタイミングで後手玉に詰みがあった!図」。後手が先手玉に猛攻しているようだが、先手もなかなか決め手を与えない。そこで、後手は△3三角と一旦受けに回ったのだが…。なんとここで後手玉に詰みが生じている。▲7七角!〜△3三角!が二人で後手玉を詰ましにいった奇跡的な手順だった。詰み筋が見えますか?
 本譜では、この後ぎりぎりの展開が続き、最後は後手が勝ち切った。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No8 3回戦-2

 先手 鈴木雄貴(青森) vs 後手 堀井邦明(秋田)

この将棋はここが凄い! → 「受けの感覚、攻めの感覚!」

  「ここで後手のセンスの良い受けは?図」  「今度は後手のセンスの良い攻めは?図」
       
 
本局は後手が抜群の「受けの感覚、攻めの感覚!」を発揮する。
 「ここで後手のセンスの良い受けは?図」は、▲7五歩で銀が死んでしまい、さらに銀を取られる手が角に当たってくる。後手が困っているような局面での次の一手は何でしょうか?
 正解は、△5一角!。角の当たりを避けながら、先手の攻めの拠点となっている成桂に当てる好感触の一手だ。そして、銀を取られる間に一仕事しようという考えだ。△5一角以下、▲2三成桂、△4五角!、▲3二銀、△5二玉、▲3七桂、△同 と、▲7四歩で「今度は後手のセンスの良い攻めは?図」。銀は取られたが、その間に△4五角!と好位に角を据えることができた。ここで、先手陣の耐久力を低める後手の次の一手は何でしょうか。

 「あっという間に先手玉が寄せられた?図」 「それでも先手はぎりぎりの粘りをみせる!図」
       
 
「今度は後手のセンスの良い攻めは?図」からの次の一手は、△2八歩!。これで、先手陣は一気に寄せやすくなった。そして、この後に注目していただきたい。▲4六歩、△6七角成!、▲同 金、△7六桂!、▲同 金、△6七銀!で「あっという間に先手玉が寄せられた?図」。後手、さすがの切れ味だ。△5一角!の受けからの、△2八歩!〜△6七角成!〜△7六桂!〜△6七銀!攻めは、抜群の攻守の感覚の良さが光っている。
 しかし、先手は青森県が誇る鈴木五段。簡単には土俵は割らない。「あっという間に先手玉が寄せられた?図」から、▲7八桂!、△6八金、▲8九銀、△7六銀成、▲4五歩、△同金右、▲6四歩、△同 歩、▲8五角!で「それでも先手はぎりぎりの粘りをみせる!図」。▲7八桂!で上部の金駒の被害を1枚にとどめ、▲8五角!で攻め駒を責めながら、▲7三歩成の攻めをみせた。後手の攻めは駒が少ない。そこで、「駒を与えない」「攻め駒を責める」が受ける方針となる。そして、攻めをみせれば後手は間違えやすくなる。先手の対応もさすがだ。本局は、最終的には後手が勝ったが、この後延々と攻防が続いた。強い人二人が戦うとこういうことになる、という将棋だった。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No9 3回戦-3

 先手 佐藤弘康(秋田) vs 後手 船橋隆一(青森)

この将棋はここが凄い! → 「将棋はと金を作る競技!」

   「先手はここでどこから動くのか?図」   「と金を使うためにはどうしたら良い?図」
       
 「先手はここでどこから動くのか?図」から、▲5五歩、△同 歩、▲同 銀、△5四歩、▲6四歩!、△5五歩、▲6三歩成!、△4四角、▲6四歩!、△5六歩!、▲同 飛、△7七角成、▲5一飛成、△9九馬、▲5四歩!、△4四馬、▲5三歩成!、△2五歩、▲5四と!、△3五馬、▲4七金、△2四桂、▲6六角、△6五銀、▲9九角、△5四銀、▲同 竜、△5三歩、▲6五竜、△8六歩で「と金を使うためにはどうしたら良い?図」。▲6四歩!〜▲6三歩成!〜▲6四歩!〜▲5四歩!〜▲5三歩成!〜▲5四と!という銀桂香損の手順を見ていると、「将棋はと金を作る競技!」なのか!と驚きを感じる。
 さて、「と金を使うためにはどうしたら良い?図」からの次の一手は何でしょうか。

   「馬が消えればと金が働き出す!図」   「二枚目のと金が働き出して先手優勢!図」
       
 「と金を使うためにはどうしたら良い?図」からの次の一手は▲3六銀!。以下、△3六同桂、▲同 歩、△4四馬、▲同 角、△同 歩、▲6二角!で「馬が消えればと金が働き出す!図」。▲3六銀!は駒損覚悟で馬に働きかける一手。この馬がいなくなれば、と金が働き出す。▲6二角!で、次の▲5三とが受からない。そして、このと金が動き出すと…。
 「馬が消えればと金が働き出す!図」以下、△8七歩成、▲5三と、△7七と、▲4二と、△同 金、▲6三歩成!、△8九飛成、▲5三と!、△3二金、▲4三金で「二枚目のと金が働き出して先手優勢!図」。一枚目のと金が働き出すと二枚目のと金ができる。これはまさに「と金地獄」。と金ができると、多少の駒損が吹っ飛んでしまう。「将棋はと金を作る競技!」なのか!と驚きを感じる。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No10 4回戦-1

 先手 上野伸一(山形) vs 後手 工藤俊介(青森)

この将棋はここが凄い! → 「飛車先で手を作る!」

  「居飛車党の方は一目なんですよね?図」 「やっぱり次の一手も一目なんですよね?図」
       
 居飛車は飛車の将棋、振り飛車は角の将棋と言われている。だから、振り飛車党は飛車先で手を作る感覚がピンとこない。
 「居飛車党の方は一目なんですよね?図」から、▲2四歩!、△同 歩、▲2三歩!、△7三角、▲4六歩、△6五銀、▲7五歩、△7六歩、▲8八銀、△3三金寄、▲6三角、△6六歩で「やっぱり次の一手も一目なんですよね?図」。▲2四歩!〜▲2三歩!ともちろん飛車先で手を作る。△2三同金では金が斜めに誘われてしまうし、かといって放置してしまうと、飛車先を破られてしまう。そこで、△3三金寄とこちらの金で取りにいく。しかし、この金の位置は後々問題になってくる。
 では、「やっぱり次の一手も一目なんですよね?図」からの次の一手は何でしょうか?もちろん居飛車党の方は一目なんですよね?

   「角が死んで先手が困っている?図」   「ついに飛車先を破ることに成功した!図」
       
 「やっぱり次の一手も一目なんですよね?図」からの次の一手は▲2二歩成!。やはり飛車先で手を作る。以下、△2二同金、▲2五歩!、△4二玉、▲2四歩!、△6七歩成、▲同金右、△6二歩で「角が死んで先手が困っている?図」。▲2二歩成!を玉で取ると角が成られるので、△2二同金と壁金になってしまった。そして、今度は▲2五歩!。これを△2五同歩、▲同桂は金に当たってくる。先程の△3三金寄が祟ってくる。3三に金駒がいる時は桂馬の標的になる。そこで、▲2五歩!に手抜きで△4二玉〜△6七歩成〜△6二歩と角を取りに行ったのだが…。
 「角が死んで先手が困っている?図」からの次の一手は▲4五角成!、以下、△4五同銀、▲同 桂、△5二玉、▲6六歩、△5四銀、▲3三桂成、△同 桂、▲2三歩成で「ついに飛車先を破ることに成功した!図」。一見ピンチのようだが▲4五角成!の強手があった。△4五同銀、▲同 桂が金に当たってくる。つくづく先程の△3三金寄が標的になっている。以下、ついに飛車先を破ることに成功した。
 最終的には後手が勝ったが、先手の「飛車先で手を作る!」手順が見事な一局だった。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No11 4回戦-2

 先手 鈴木雄貴(青森) vs 後手 松田樹雄(山形)

この将棋はここが凄い! → 「方針を考える!」

   「ここから後手は激しく動いていく!図」   「どういう方針で考えるべきなのか?図」
       
 「ここから後手は激しく動いていく!図」から、△8六歩、▲同 歩、△6六角、▲同 金、△5七銀、▲6七金引、△4六銀成、▲同 銀、△4七角、▲5八角、△同角成、▲同 玉、△8六飛、▲8七歩、△8一飛で「どういう方針で考えるべきなのか?図」。先手は△8六歩〜△6六角〜△5七銀と思い切った攻めに出た。しかし、「どういう方針で考えるべきなのか?図」を見ると、激しく動いた割には局面が落ち着いてしまったようにも見える。ただ、先手の立場で考えると、この後どうしたら良いのか悩むところでもある。最低でも桂馬は取れそうだが、本局はもっと良さを求めた手順をみせる。さて、どういう方針を立てるべきか考えてみてください!

   「ここから後手は激しく動いていく!図」   「どういう方針で考えるべきなのか?図」
       
 「どういう方針で考えるべきなのか?図」では盤上に見事に斜めのラインが出来上がっている。ということは、この局面で一番働く駒は角。どちらがこのラインに角を配置するかで優劣が決まる。「どういう方針で考えるべきなのか?図」以下、▲8八角!、△3三角、▲6六歩!、△6三銀、▲2五銀!で「桂馬を取りながら角を目標にする!図」。▲8八角!と好位に角を打ち、△3三角と合わせさせることで△3九角の筋を消しておく。そして、▲6六歩!。これは桂馬取りを見せながら、後手の角を目標にする方針だ。▲2五銀!から角頭攻めを見せられると後手は苦しい。
 「桂馬を取りながら角を目標にする!図」以下、△5五歩、▲同 歩、△4四歩、▲3七桂、△7五歩、▲6五歩、△同 歩、▲2四歩、△同 歩、▲同 銀、△同 角、▲同 飛、△2三歩、▲2八飛で「大きく駒得した先手が大優勢!図」。これは、桂得できそうな局面だったのが、それに加えて角銀交換までついてきた局面。方針をしっかり立てると優位が拡大するとわかる将棋だった。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No12 4回戦-3

 先手 山寺清志(山形)vs 後手 船橋隆一(青森)

この将棋はここが凄い! → 「金冠の弱点を突く!」

  「ここから穴熊の暴力が始まります!図」   「ここから金冠の弱点を突くには?図」
       
 「ここから穴熊の暴力が始まります!図」は△3四銀打と馬に当てた局面。固めた後の穴熊は切る手から考える。チャンスがありそうなら当然踏み込んでいく。以下、▲3四同馬!、△同 銀、▲4六桂!、△4三銀!、▲4五銀、△2三角!、▲3四角、△4四歩!、▲2三角成、△同 金、▲5六銀、△3二金で「ここから金冠の弱点を突くには?図」。▲3四同馬!〜▲4六桂!と切ってから好位に桂馬を据えたが、△4三銀!〜△2三角!〜△4四歩!が手厚い受けで、▲5六銀と一歩後退もやむなしか。ここで△5六同銀、▲同歩、△4五歩と桂馬を取って、単純に攻め駒を減らしていくのが良かったのかもしれないが、本譜では△3二金と守りを固めた。この金の配置と△2二玉は玉の守りとして基本となる形。金が守備駒としてもっとも働いている位置だ。そこで、通常これは感触の良い手なはず。しかし、後手の玉形を見るとなんと金冠。受けているうちに流れの中からこうなってしまった。金と銀の位置が入れ替わっていることで、△3二金による弱点ができている。「ここから金冠の弱点を突くには?図」から少し攻めあぐね気味の先手が攻めの糸口をつかむ。ではここからの三手を考えてみてください。

「金冠は5三の地点に駒が利いていない!図」「桂馬を取りに行ったが、と金攻めが厳しい!図」
       
 「ここから金冠の弱点を突くには?図」から、▲6五銀、△同 歩、▲6四角!で「金冠は5三の地点に駒が利いていない!図」。▲6四角!が金冠の弱点を突く一手。△3二金と寄ったため5三の地点に駒が利いていない。▲5三角成〜▲5四桂を見せられて後手は急がされている。そこで、以下△4五歩、▲7四歩、△8四竜、▲7三角成、△同 竜、▲同歩成、△4六歩、▲6三と!で「桂馬を取りに行ったが、と金攻めが厳しい!図」。後手は桂馬を取っている間に、と金を作られてしまった。そして、▲6三と!が厳しい。またも攻めるポイントは5三の地点だ。手厚く受けられ一歩後退したはずが、ここでは食い付きに成功している。
 5三に向かって手が伸びるところが、さすが山形を代表する強豪だ。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No13 5回戦-1

 先手 工藤俊介(青森)vs 後手 星宮 謙(宮城)

この将棋はここが凄い! → 「受けの力!」

 「先手はここから仕掛けてみたものの…図」  「後手はここから受けの力が必要だ!図」
       
 強豪は「受けの力」が違う。「受けの力」が無いと、良くなってもあっという間に逆転される。
 「先手はここから仕掛けてみたものの…図」は、▲4五歩、△同 歩、▲3五歩と仕掛けたのだが…。以下、△4四銀、▲3四歩、△3五銀、▲2九飛、△4六歩、▲4八金、△3六歩、▲1七角、△4七歩成、▲3五角、△3七歩成、▲4四角、△2八と、▲6九飛、△4八と、▲1一角成、△5八と、▲6七飛で「後手はここから受けの力が必要だ!図」。後手は△4四銀〜△3五銀〜△4六歩〜△3六歩と見事に立ち回り攻めを受け止めた。「後手はここから受けの力が必要だ!図」まで来ると、と金が出来た上に飛車を抑え込み後手が優勢だ。しかし、ここで後手は「受けの力」が必要だ。判断を間違えると、先手の馬が活躍しだす。
 では、ここで後手はどう考えたら良いのでしょうか?次の一手と、その狙いを考えてみてください。

 「馬が消えれば先手の攻めは怖くない!図」 「△2二銀!で馬の働きを抑え込んだ!図」
       
 「後手はここから受けの力が必要だ!図」で、攻める先手の最も強力な駒は馬だ。では、受ける後手はその馬を消しにいく。では、どうするか?「後手はここから受けの力が必要だ!図」から、△5五桂、▲同 銀、△同 角!で「馬が消えれば先手の攻めは怖くない!図」。後手は見事な手順で馬に角を当てていった。
  しかし、先手も局面を簡単にはしない。「馬が消えれば先手の攻めは怖くない!図」から、▲4四桂!、△2二銀!、▲3二桂成、△同 玉、▲3三香、△同 桂、▲同歩成、△同 玉で「△2二銀!で馬の働きを抑え込んだ!図」。先手は▲4四桂!馬を消されるのを避けながら、金に当てていく。桂馬の金取りに悪手なし!という局面だが、△2二銀!が落ち着いた受け。自陣の飛車まで利いてきて、馬を抑え込んだ。やはり、馬を働かせないのが受けのポイントだ。
 △5五桂〜△同 角!と馬を消しにいき、△2二銀!と落ち着いて受ける。これはもう受けの力が違うと言いたくなる見事な指し回しだ。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No14 5回戦-2

 先手 越後雅邦(宮城)vs 後手 鈴木雄貴(青森)

この将棋はここが凄い! → 「相振り飛車は囲いと飛車の位置!」

  「先後共にここから歩の交換に行く!図」  「ここから後手が美濃囲いの弱点を突く!図」
       
 相振り飛車のポイントは、囲いと飛車の位置。相手の飛車の位置を見て囲いを決めて、その囲いを見て飛車を振り直すということがよくある。
 「先後共にここから歩の交換に行く!図」は、先手「中飛車美濃囲い」対後手「三間飛車金無双」の局面。ここからお互いに歩の交換に行く。以下、▲5四歩、△3六歩、▲同 歩、△同 飛、▲3七歩、△3四飛、▲5三歩成、△同 銀、▲7七角、△2四飛、▲5六飛、△1五歩、▲8六歩、△3三角、▲8五歩、△5四銀、▲8六角、△4五銀、▲5九飛、△5三歩、▲7七桂、△2六歩、▲同 歩、△同 飛、▲2七歩、△2四飛、▲6八金で「ここから後手が美濃囲いの弱点を突く!図」。後手は歩を手に入れながら「向かい飛車金無双」に変化している。この時点で後手が少し指しやすいのかもしれない。それは中飛車が金無双の弱点を攻めづらいのに、向かい飛車が美濃囲いを攻めるのに向いているから。
 「ここで先手美濃の弱点を攻めてください!図」からの後手の攻めを考えてみてください。

  「先後共にここから歩の交換に行く!図」  「ここから後手が美濃囲いの弱点を突く!図」
       
 「ここから後手が美濃囲いの弱点を突く!図」から、△1六歩、▲同 歩、△1七歩、▲同 香、△1三桂で「美濃囲いには端攻めを狙え!図」。美濃囲いへの攻めは「横からの攻め」「斜め攻め」「縦の攻め」「端攻め」が考えられる。相振り飛車では、中でも「端攻め」が重要になってくる。そのために必要なものは「持ち歩」と「桂馬」。「美濃囲いには端攻めを狙え!図」は「端攻め」ができる条件が揃っている。後手は△1六歩〜△1七歩〜△1三桂と綺麗に端攻めの形を作った。
 それに対して金無双の弱点はいわゆる「うさぎの耳」と言われる腰掛け銀からの6筋攻め。しかし、中飛車は6筋攻めを攻めるのが難しい。なぜなら、腰掛け銀と中飛車が相性が悪いからだ。しかし、後手に先攻されたからには先手も動いて行くしかない。「美濃囲いには端攻めを狙え!図」から、▲5五銀、△2六歩、▲同 歩、△同 飛、▲2七歩、△7六飛、▲9五角、△9四歩で「先手陣の隙を突いて後手が優勢に!図」。先手は▲5五銀と中央から動いていくしかない。しかし、それによって先手陣に隙が生まれた。△2六歩〜△7六飛と角を攻められ、以下角が死んでしまった。見事に、攻め駒を責める「B面攻撃」が決まった。
 「端攻め」を見せて相手に動いてもらい「B面攻撃」で決める。見事な相振り飛車の勝ちパターンの一局だった。

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<第61回 東北六県将棋大会> 青森県代表棋譜集No15 5回戦-3

 先手 船橋隆一(青森)vs 後手 阿部駿弥(宮城)

この将棋はここが凄い! → 「攻めを繋げ、受け続ける!」

「駒組が飽和状態になり先手が仕掛ける!図」 「後手がうまく対応したように見えるが…図」
       
 「駒組が飽和状態になり先手が仕掛ける!図」から、▲2四歩、△同 歩、▲3五歩、△4四飛、▲2六飛、△3五歩、▲同 角、△3四飛、▲3六飛、△4四角で「後手がうまく対応したように見えるが…図」。先後共に駒組が整い、手番の先手は当然▲2四歩〜▲3五歩と仕掛ける。それに対して後手は、△4四飛〜△3五歩〜△3四飛〜△4四角と対応する。飛車と飛車の間に駒が挟まった状態は技がかかる状態。両者共に緊張がはしる局面だ。
 では、先手からの攻めの三手を考えてください。そして、腕に自信のある方は、そこからの後手の受けの形を想像してください。

「先手がうまく切り返したように見えるが…図」「後手が受けに回りバランスが取れている!図」
       
 「後手がうまく対応したように見えるが…図」から、▲4四同角、△3六飛、▲4五桂!で「先手がうまく切り返したように見えるが…図」。間に角が挟まって先手困っているようにも見えたが、飛車を取られても▲4五桂!と桂馬が活用ができればでき今度は先手がよく見えてくる。しかし、ここから後手が受けにでる。△3八飛成、▲5三桂成!、△4三歩、▲5二成桂 △4四歩、▲6一成桂、△同 銀、▲4三角、△7二銀上、▲6二金、△3九飛、▲6八金引、△3一竜!、▲5三金、△3三飛成!、▲3四歩、△2三竜、▲2二歩、△4三竜、▲同 金、△2二竜で「後手が受けに回りバランスが取れている!図」。▲5三桂成!が実現して先手優勢に見えるが、△3一竜!〜△3三飛成!と二枚竜の強硬な受けで後手何とかしのいでいるか。先手が攻め切るのはまだまだ大変だ。
 先手の仕掛けに後手がうまく対応し、それを先手がうまく切り返し、今度は後手が強硬な受けでしのぐ。指した方がよく見える。まさにそんな将棋だった。

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<了>

文責 阿部浩昭

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