三大タイトル戦制覇への道

青森将棋界の三大タイトル戦の「県名人戦」「有段者選手権」「県王将戦」。
これらすべてを制覇した方々の将棋を紹介します。
いかにして三大タイトルを獲得したのでしょうか?

※※※ 第1回 岩谷 良雄 五段 ※※※

<県王将戦> 第23期決勝 対局日 1988年(昭和63年)1月17日

 先手 
岩谷 良雄 五段 vs 後手 渡辺 三郎 六段 戦

この将棋はここが凄い! → 「岩谷さんは常に狙っている!」

 「一体どこから手をつけたら良いのか?図」  「ここからの七手で決まってしまう!図」
       
 まずは、「一体どこから手をつけたら良いのか?図」を見ていただきたい。先手も後手も囲いが崩れていない。まだまだ決着はつきそうもない。ここでの先手からの三手を考えていただきたい。
 「一体どこから手をつけたら良いのか?図」から、▲4六桂!、△3三香?、▲7四歩!。金桂交換で駒損の先手は桂馬を上手く使うしかない。そこで、▲4六桂!なのだが、後手は△3三香?と手堅く受けた。次の▲3六香を警戒したものと思われる。この△3三香?を見て、おそらく岩谷さんはある大技をイメージしたに違いない。今度は盤の反対側の▲7四歩!を突いた。これが大変な狙いを秘めた一手だった。以下、△7二歩、▲3八銀、△5八金?で「ここからの七手で決まってしまう!図」。そして、△5八金?と次の△4八角の確実な攻めを狙った一手が更なる伏線となって、恐ろしい局面が出来上がってしまった。
 「ここからの七手で決まってしまう!図」からの七手をぜひ考えて見てください。ここから岩谷さんが鬼のような強さを発揮して「県王将」を獲得します。

 「一体どこから手をつけたら良いのか?図」  「勝ち将棋は鬼の如しの決まり方!図」
       
 「ここからの七手で決まってしまう!図」から、▲8六角!、△8八竜、▲2三香!、△同 玉、▲4一竜!、△同 銀、▲3一角成!で「あっと言う間に決まってしまった!図」。△3三香?は上への防御しかできない。そして、この香車は身動きが取れず玉の横に壁を作っている。それを見て、岩谷さんは裏からの攻めを狙った。▲7四歩!はと金を作ろうとするように見せかけて、実は角道を作る一手だったのだ。次の▲8六角!を狙っているところに△5八金?で受けの駒が無くなった。条件は整った!狙いの▲8六角!〜▲2三香!〜▲4一竜!〜▲3一角成!が決まった。後手の持ち駒は受けに使いづらいものばかり。以下、なんとか△4二飛と粘るが、▲5四桂!、△2二角、▲4二桂成、△同 金、▲2一馬、△3二銀、▲2二馬、△同 玉、▲5四桂で、「勝ち将棋は鬼の如しの決まり方!図」。▲5四桂!が鬼の如しの一手。上からの攻めを狙ったこの駒がこちらに使えるようではもはや後手はもたない。再度の▲5四桂で後手は投了。岩谷さんが「県王将」のタイトルを獲得した。
 一撃必殺の大技のチャンスを常に狙い、チャンスを逃さない。岩谷さんの闘志が伝わってくる将棋だ。

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<有段者選手権> 第28回決勝 対局日 1975年(昭和50年)4月20日

 先手 
岩谷 良雄 四段 vs 後手 高田 富夫 三段 戦

この将棋はここが凄い! → 「岩谷さんは絶対に諦めない!」

 「ここから先手が勝つように見えますか?図」  「随分粘り、驚かせたがまだまだ後手優勢!図」
       
 「ここから先手が勝ように見えますか?図」は先手大苦戦。先に大駒二枚を配置されている。先に桂香を拾われている。と金を作られている。手数で言えば4〜5手は先手が遅れている。どうにもこうにも先手に勝ちがあるようには見えない。しかし、岩谷さんは絶対に諦めない。ここから100手程、苦しい将棋を粘り続け、最後の最後で大逆転してしまう。
 まず、「ここから先手が勝つように見えますか?図」から粘り始める。▲6九歩!、△6七と、▲8一飛、△5七香、▲8七飛成!、△8八飛成、▲6七竜!、△5九香成、▲同 金、△7七角成、▲5八竜!、△9七竜、▲8九桂!、△5九馬、▲同 竜、△9八竜、▲6八歩!、△8九竜で、「随分粘り、驚かせたがまだまだ後手優勢!図」。▲6九歩!、▲6七竜!、▲6八歩!と随分と粘り、▲8七飛成!、▲5八竜!、▲8九桂!と随分と驚かせた。それでも、角と金銀桂の三枚換えで後手が優勢だ。しかし、こういう粘りと驚かせることで相手のスタミナを削り、100手後の大逆転を生んでいるのではないか?
 では、「随分粘り、驚かせたがまだまだ後手優勢!図」から、岩谷さんは悪いなりに何を狙うでしょうか?まだまだ戦う気満々の次の一手を考えてみてください。

 「玉のこびんを攻め、王手竜取りを狙う!図」「勝負勝負と急所を突き、攻めの形を作った!図」
       
 「随分粘り、驚かせたがまだまだ後手優勢!図」からの次の一手は▲3七香!。これは何を狙っているのか?以下、△4四歩、▲3五歩!、△同 歩、▲5五歩!で「玉のこびんを攻め、王手竜取りを狙う!図」。後手の急所を突き、随分と後手玉が危うくなってきた。この後、さらに岩谷さんは勝負勝負と迫っていく。以下、△8六竜、▲3四歩!、△4五歩、▲5六角!、△4四銀、▲4五歩!、△5五銀左、▲4四角!で「勝負勝負と急所を突き、攻めの形を作った!図」。ここまでくると、「後手が良いはずなのだが…」という局面になっている。
 この後も粘りと驚かせることを延々繰り返し、最後の最後に岩谷さんが大逆転勝利を収めた。この将棋は、4〜5手ほど負けていた局面を100手位かかって大逆転しているのではないか?岩谷さんの闘志がひしひしと伝わってくる将棋だ。

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<県名人戦> 第30回決勝 対局日 1976年(昭和51年)5月2日

 先手 
工藤 寿幸 初段 vs 後手 岩谷 良雄 四段 戦

この将棋はここが凄い! → 「岩谷さんは本当に諦めない!」

「ここから後手が勝つように見えますか?図」 「なんとか食らい付いたが、まだまだ先手優勢!図」
       
 「ここから後手が勝ように見えますか?図」は後手大苦戦。先手は好位置の角が大意張り。そして、と金と銀で後手玉に迫っている。持ち駒も豊富だ。それに対して、後手の唯一の大駒の角は全く働いていない。何より持ち駒が銀一枚ではとにかく攻め味がない。どうにもこうにも後手に勝ちがあるようには見えない。しかし、岩谷さんは本当に諦めない。ここから僅かな光明を信じ先手玉に迫り、最後の最後で大逆転してしまう。
 まず、「ここから後手が勝つように見えますか?図」から食らい付いていく。△7七銀!、▲5七玉、△8六銀不成、▲6三と、△4五金!、▲7二と、△同 金、▲6三金で「なんとか食らい付いたが、まだまだ先手優勢!図」。△7七銀!〜△4五金!は必死の食い付きだが、先手玉はあまりに広い。しかし、こういう必死の食い付きが、数手後の大逆転を生んでいるのではないか?
 では、「なんとか食らい付いたが、まだまだ先手優勢!図」から、岩谷さんは悪いなりに何を狙うでしょうか?ここから大逆転を目指す、五手を考えてみてください。

「どこまでもどこまでも必死に食らい付く!図」 「自陣の角が働き出し、攻めの形を作った!図」
       
 「なんとか食らい付いたが、まだまだ先手優勢!図」から△4六金、▲同 玉、△6四金!、▲同 金、△3六銀!で「どこまでもどこまでも必死に食らい付く!図」。後手の急所を突き、随分と後手玉が危うくなってきた。この後、さらに岩谷さんは勝負勝負と迫っていく。以下、▲4九桂、△7五銀、▲6五金、△2五歩、▲2八飛、△4五歩、▲同 銀、△同 銀、▲同 玉、△6二角、▲4四歩、△3六角、▲3五玉、△4七角成、▲7五金、△4三歩!で「自陣の角が働き出し、攻めの形を作った!図」。ここまでくると、「後手が良いはずなのだが…」という局面になっている。
 ここでもまだまだ先手が勝っていそうだが、最後の最後に岩谷さんが大逆転勝利を収めた。この将棋は、全く攻め味がないところでも必死に食らい付き続け大逆転しているのではないか?岩谷さんの闘志がひしひしと伝わってくる将棋だ。

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※※※ 第2回 準備中 ※※※
隙を見て更新いたします。

文責 阿部浩昭