嘉瀬ワールドとは何か?

青森将棋界のレジェンド、嘉瀬松雄五段の将棋を紹介します。(不定期連載)

  

※※※第1部 嘉瀬ワールドとは何か?※※※
嘉瀬ワールドの凄さが分かる三局。
橋立正大五段戦横山幸男五段山中恵介四段

※※※第2部 全国シニア名人への道!※※※

全国シニア名人になるまでの三局。
奈良岡良一四段戦橋本國雄五段中平貴将六段


※※※第3部 全国強豪たちとの戦い!※※※

全国強豪たちに技を魅せた三局。
準備中


※※※第1部 嘉瀬ワールドとは何か?※※※
嘉瀬ワールドの凄さが分かる三局。

<嘉瀬松雄棋譜集No1> 

2002年青森県グランドチャンピオン戦3回戦 対局日 2002年12月15日

 先手 嘉瀬 松雄 五段 vs 後手 橋立 正大 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「嘉瀬松雄の受け切り!」

 「先手玉の囲いがあまりに薄すぎる?図」  「ここから嘉瀬松雄は完璧に受け切る!図」
       
 まず、49手目▲7七角まで「先手玉があまりに薄すぎる?図」を見ていただきたい。後手の石田流を先手の金駒が受け止めている局面。善悪はともかく先手玉が薄すぎて大変そうに見える。ここから、△6六歩!、▲同金!、△5七角成、▲4六銀!、△6六馬、▲同角、△6五銀、▲7五角、△5四飛、▲5六歩、△7四飛で「ここから嘉瀬松雄は完璧に受け切る!図」。先手玉の周りや持ち駒に金駒がありません。この状態で受け切れるのでしょうか?一手間違えればあっという間に終了です。ここからの3手を考えてみてください。上級者の方はその後、先手玉はどうなるか?どうやって反撃するか?までイメージしてみてください。この将棋はここから「嘉瀬ワールド」が堪能できます!

   「大駒二枚で受け切っている!図」    「先手端攻めからの攻め合い勝ち!図」
     
 「ここから嘉瀬松雄は完璧に受け切る!図」から、▲3一角成、△7六銀、▲7七歩!、△6七金、▲6九玉、△3七歩!、▲同金!、△7七銀成、▲同桂、△同飛成、▲8六馬!で「大駒二枚で受け切っている!図」。▲7七歩!で▲7五歩だと△8四飛があり受けに困る。▲7七歩!でも△6七金があり危なそうに見える。しかし、これは攻めさせているのだ。真の狙いは攻めをかわしながら右辺の金銀の囲いに逃げ込むこと。そうはさせじと△3七歩!と先に囲いを崩そうとしたが、▲3七同金!がこれを逆用した一手だった。これで飛車が受けに利いてきた。以下、▲8六馬!までの受け切り。大駒二枚が強力な受け駒として働いている。危ないようでいて危なくない。嘉瀬松雄の絶品の受けだった。
 では、この後どうやって勝ちにするのか?「大駒二枚で受け切っている!図」から、△6八歩、▲5九玉、△7九龍、▲4八玉、△3四桂、▲3八玉、△4六桂、▲同銀、△4七歩、▲同金、△5八銀、▲3七金、△4五桂、▲同銀、△4九龍、▲2七玉、△4五龍、▲4六歩、△5六龍、▲9五歩!で「先手端攻めからの攻め合い勝ち!図」。何とこの将棋、ここから先手の攻め合い勝ちになるんですよ!そんな将棋になるなんて誰が予想できたでしょうか?指がしなって▲9五歩!と指す様子が目に浮かびます。
 どうです「嘉瀬ワールド」をご堪能いただけましたか?

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<嘉瀬松雄棋譜集No2>

2003年青森県グランドチャンピオン戦1回戦 対局日 2003年12月14日

 先手 横山 幸男 五段 vs 後手 嘉瀬 松雄 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「嘉瀬松雄の構想力!」

 「ごくありふれた将棋に見えますが…図」  「嘉瀬松雄は異次元の構想力を見せる!図」
     
 「ごくありふれた将棋に見えますが…図」どう見ても普通です。以下、▲5七銀、△6二銀、▲7七角、△3二金、▲2五歩、△3三角、▲8八玉、△5四歩、▲9八香、△4五歩、▲6六歩まで「嘉瀬松雄は異次元の構想力を見せる!図」。△3二金が少し早いのは後の構想があったらかもと今となっては感じますが、まだまだ普通です。では、先手の穴熊に対して、この後、嘉瀬さんはどういう構想を見せたでしょうか?次の一手は誰も当たらないでしょう。ましてやこの後の構想は誰にも想像つかないでしょう。何とか嘉瀬松雄になり切って考えてみてください。この将棋もここから「嘉瀬ワールド」が堪能できます!

「嘉瀬松雄には一体何が見えているのか?図」 「こんな局面を誰が想像できたろうか?図」
     
 「嘉瀬松雄は異次元の構想力を見せる!図」から、△5三銀!、▲9九玉、△4四銀!で「嘉瀬松雄には一体何が見えているのか?図」。この時点では、なぜ銀が上がっていくのだろうか?嘉瀬さんに何が見えているのか?常人では想像がつかない。そして、ここから嘉瀬ワールドが姿を現す。以下、▲6七金、△6二玉!、▲8八銀、△5一玉!、▲7九金、△3五歩!、▲6五歩、△4一玉!、▲1六歩、△1四歩、▲6六銀、△3一玉!、▲6八金引、△2二玉!、▲7八金寄、△9四歩、▲6八飛、△6二飛、▲9六歩、△5二金、▲8六歩、△3四銀、▲2八飛、△4三金右!で「こんな局面を誰が想像できたろうか?図」。これは一体どういうことか?
 居飛車穴熊の弱点は駒の偏り。銀が左に寄っていくと右辺の駒の働きが少なくなる。そこで、後手玉は6二玉!から大遠征を始める。そして、△3五歩!と桂馬の活用を防いで銀立ち矢倉を目指す。飛車角の大駒二枚だけでは金銀四枚の囲いは破れない。ただ、先手の銀を働かせないようにすれば良い。後は、後手番なので千日手でも良し、玉頭を攻められたら入玉を目指しても良し。もしかすると、中飛車にして居飛車穴熊を誘い、玉の大遠征からの銀立ち矢倉を狙っていたのではないか?嘉瀬松雄の構想力恐るべし!また、ここからの激しい攻防も素晴らしいので、ぜひ棋譜を見てください。
 どうです「嘉瀬ワールド」をご堪能いただけましたか?

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<嘉瀬松雄棋譜集No3> 

2001年杉野杯決勝 対局日 2001年9月9日

 先手 山中 恵介 四段 vs 後手 嘉瀬 松雄 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「嘉瀬松雄の大局観!」

  「局面が膠着し千日手模様だが…図」   「嘉瀬松雄の繊細かつ正確な大局観!図」
     
 「局面が膠着し千日手模様だが…図」を見ていただきたい。お互いに仕掛ける部分がなく、千日手模様に見える。以下、▲8六飛、△8二飛、▲7六飛、△7二飛、▲8六飛、△8二飛、▲7六飛、△7二飛、▲8六飛、△7一飛、▲8四飛、△2一飛、▲8二飛成で「嘉瀬松雄の繊細かつ正確な大局観!図」。何と後手から千日手を回避した!飛車を大転回し玉頭を攻める狙いは分からないでもない。しかし、飛車を無条件に成らせて、攻めが間に合うのだろうか?そう感じる局面での次の一手を考えていただきたい。繊細で正確な大局観による手が出ます。この将棋もやっぱり「嘉瀬ワールド」が堪能できます!

  「もう先手から動いていくしかない!図」  「攻める時は攻め、守る時は守る!図」
     
 「嘉瀬松雄の繊細かつ正確な大局観!図」から、△9五歩!、▲8八角、△9六歩で「もう先手から動いていくしかない!図」。嘉瀬さんはなんと△9五歩!とこんな忙しそうな局面で玉と反対の端歩を突いた!龍が成られているのに本当にこんな手が間に合うのだろうか?
 まず、先手が何もしなければ後手は△9七歩成、▲同香、△同香成、▲同角、△2二香!で端の香車を玉頭へワープさせる狙いがある。すぐにも△2五歩を突くのも有力だが、香車を打ってから突けばそれで将棋は終わってしまう。だから、先手は動いていくしかないのだ。
 では動かれても大丈夫なのだろうか?そこには動かれない下準備がある。△9三香で香車にひもをつけて龍で拾われないようにしている。次に、△5四金が▲7四歩、△同歩、▲6四角の角の活用を防いでいる。また、▲8八角から角を使おうとしても石田流の駒組みなので桂馬が邪魔になって使えない。唯一動けそうな▲4五歩に備え、その地点へ後手の多くの駒が利いている。だから、龍一枚に攻められても大丈夫、実は全然忙しくないのだ。
 嘉瀬さんは繊細な下準備をして局面を作り、正確な判断で「相手の攻めは無い」と見切って△9五歩!と突いているのだ。恐るべき大局観だ。
 後は▲4五歩からの無理攻めに普通に対応すれば良いだけ。とは言うものの、普通な対応というのが難しい。しかし、嘉瀬さんはこともなげにやり遂げる。
 以下、▲4五歩、△同金、▲同銀、△同銀、▲3七桂、△3六銀、▲同銀、△同歩、▲同金、△4七銀、▲4五歩、△6六角、▲4四銀、△5二銀打、▲4六金、△5七角成、▲8五桂、△4四銀、▲同歩、△3九銀で「攻める時は攻め、守る時は守る!図」。攻めと守りのバランスが実に絶妙かつ正確だ。以下、先手の攻めをきれいにかわして嘉瀬松雄快勝譜となった。
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※※※第2部 全国シニア名人への道!※※※
全国シニア名人になるまでの三局。

<嘉瀬松雄棋譜集No4> 

2014年シニア名人戦青森県大会決勝 対局日 2014年2月9日

 先手 奈良岡 良一 四段 vs 後手 嘉瀬 松雄 五段 戦

この将棋はここが凄い! → 「嘉瀬松雄の寄せ!」

 「ここから嘉瀬松雄の手は急所へ向かう!図」 「広い後手玉を包むように寄せる!図」
     
 最初は、青森県代表を決めた対局から。
 まずは「ここから嘉瀬松雄の手は急所へ向かう!図」を見ていただきたい。手番は先手、駒割りは金と桂香の二枚換えで歩の数も入れると先手有利、ただ囲いは先手金駒二枚、後手三枚で後手優勢。つまり、ここから後手の囲いを崩せれば先手勝勢の局面。もちろん嘉瀬さんの手は急所を知っている。ここで、▲6五歩と玉頭を攻めて優勢となった。以下、△5六角、▲6四歩!、△7四金、▲6三香、△同銀、▲同歩成、△同玉、▲7九歩!、△5二玉で「広い後手玉を包むように寄せる!図」。△5六角が金取りで怖い手だが、▲6四歩!と踏み込み、以下香車を金駒と交換することに成功した。そして、▲7九歩!で歩を金駒の代用とし、鉄壁な囲いが出来上がった。これで囲いの固さも完全に逆転した。後は、後手玉を寄せるだけ。ただ、後手玉はかなり広い。追い掛け回すと捕まらない。
 ここからの包み込むような次の一手を考えてみてください。

 「二枚の歩で後手玉が急に狭くなった!図」「上から押さえつけて寄せの形を作った!図」
     
 「広い後手玉を包むように寄せる!図」からの次の一手は▲4四歩!。以下、△4二歩、▲2四歩!で「二枚の歩で後手玉が急に狭くなった!図」。▲4四歩!〜、▲2四歩!と歩のみで後手玉の逃げ道を限定した。もはや△4一玉と下段に落ちるしか逃げ道はなさそう。歩二枚を効果的に使った攻撃手順だ。ちなみに、少し前に▲7九歩と鉄壁の陣形を作り防御を固めた。攻めも守りも歩で効果的に行う。嘉瀬将棋のセンスの良さが伝わってくる指し手だ。
 この後の▲2三歩成を見せられ、ここから後手が乱れる。以下、△2九角成?、▲同飛、△同竜、▲2三歩成!、△6五歩、▲3三と、△6六歩、▲5七桂、△5六銀、▲6五桂打、△6四銀、▲5四歩、△同歩、▲4一角!、△同玉、▲5三銀!で「上から押さえつけて寄せの形を作った!図」。△2九角成?と、金ではなく桂馬を取られるのは先手としては大歓迎だ。本来なら、▲2三歩成!で▲4七角で投了級かもしれない。▲2三歩成!から▲4一角!と下段に落として、▲5三銀!と上から押さえつける手順を選んだのは、おそらく71手目の▲4四歩!の時点で91手目の▲5三銀!をイメージしていたからではないか?20手先が見えている「嘉瀬松雄の寄せ!」恐るべし。
 しかし、ここから後手は△3二金!と踏ん張る。以下、▲7二馬!、△同金、▲4二と、 △同金、▲4三香!、△3二玉!で先手は決められず。後手が攻めをかわしたかにも見えたが、最後は見落としがあり先手が勝ちきった。
 何とか青森県代表となったが、ギリギリの将棋だった。

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<嘉瀬松雄棋譜集No5> 

2014年シニア名人戦東日本大会決勝 対局日 2014年4月27日

 先手 嘉瀬 松雄 五段(青森県) vs 後手 橋本 國雄 五段(神奈川県) 戦

この将棋はここが凄い! → 「嘉瀬松雄の誘い!」

「ここから先手はどういう方針を立てるべきか?図」「相手を誘う妖しい次の一手は?図」
     
 次は、東日本大会決勝戦。
 「ここから先手はどういう方針を立てるべきか?図」は、▲4六歩で角交換を見せ、△4二金と受けさせた局面。まずは、ここで先手の次の一手を考えてみてください。
 正解は▲9五歩!。後手の金が一枚玉から離れたので、左辺での駒組み合戦に持ち込んだ。ここら辺は、後々の展開の伏線となっている。▲9五歩!以下、△8二玉、▲3六歩、△4三金、▲5七銀、△7二金、▲1六歩、△9二香、▲8六歩、△9一玉、▲8七玉、△8二銀、▲7八銀、△7一金、▲6八金寄、△6四銀、▲9八玉、△5二飛、▲6六銀、△7四歩、▲8七銀、△7二飛、▲7八金上、△1四歩で「相手を誘う妖しい次の一手は?図」。次の一手はどなたにもわからないだろう。指し手、陣形という盤上のことだけでなく、雰囲気、流れ、そして長年の勘という盤外のことも含めて指したのではないか?
 では、次の一手は何でしょうか?

「角頭を攻められても大丈夫なのだろうか?図」「嘉瀬松雄の誘いの手が決まった!図」
     
 「相手を誘う妖しい次の一手は?図」からの次の一手は、なんと▲7七角!。これは後手が攻めてきている飛車筋に自ら角頭の弱点をさらす驚きの一手だ。以下、△7五歩、▲同歩、△同銀、▲同銀、△同飛で「角頭を攻められても大丈夫なのだろうか?図」。後手は当然7筋を攻めてきた。先手には成算があるのだろうか?実は、この局面は早くも先手戦える局面になっている。なぜなら、
 1 後手は▲3二銀と打ち込まれる陣形の不備を抱えている
 2 盤面の左辺の金駒は先手の方が多い
 3 後手は二枚穴熊は▲7二歩が入ると非常に脆い
からだ。7筋から攻めてもらうのは先手大歓迎だったのだ。「角頭を攻められても大丈夫なのだろうか?図」以下、▲3二銀、△4二金、▲2三銀成で「嘉瀬松雄の誘いの手が決まった!図」。この局面で、駒得が確定した先手優勢がはっきりした。この後、先手は手に入れた角と、自陣の角を活躍させて勝ち切った。後手の穴熊は角に弱い陣形になっていて、その働きを止められなかった。
 この将棋は序盤で▲4六歩、△4二金のやり取りで金を反対に使わせ、▲9五歩!と囲い合いに持ち込み、そして▲7七角!で相手の7筋攻めを誘い反撃して決めるという嘉瀬さんの卓越したゲームコントロールが光った一局だった。
  快勝で東日本大会を制覇し、そして次はついに東西決戦へ。

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<嘉瀬松雄棋譜集No6> 

2014年シニア名人戦東西決戦 対局日 2014年5月25日

 先手 中平 貴将 六段(兵庫県) vs 後手 嘉瀬 松雄 五段(青森県) 戦

この将棋はここが凄い! → 「嘉瀬松雄の粘り!」

「シニア界のベテランがここから攻め続ける!図」「シニア界のルーキーはここから粘り続ける!図」
     
 最後は、ついに東西決戦。先手の中平さんは過去シニア名人を二度獲得している御年80歳。後手の嘉瀬さんは還暦を迎えたばかり。シニア界のベテランvsルーキーの本局は壮絶な激戦となった。
 まずは、「シニア界のベテランがここから攻め続ける!図」からの先手の次の一手は何でしょうか?正解は▲5二歩!。シニア界のベテランはまだまだ闘志衰えず、戦う気満々だ。以下、△2六歩、▲5一歩成、△3三金上、▲3八歩、△3六馬、▲3七銀、△2七馬、▲2六飛、△3八馬、▲4六銀、△2五歩、▲1六飛で「シニア界のルーキーはここから粘り続ける!図」。101手目までほとんど攻められっぱなしの嘉瀬さん。なんとここから後100手程も、決め手を与えず粘り続けます。
 ここから「まだまだ俺は粘るぞ!」という声が聞こえてくる三手を考えてみてください。

   「最初は入玉を狙ったのですが…図」  「そしてこんなところまで逃げました!図」
     
 「シニア界のルーキーはここから粘り続ける!図」から、△4五歩、▲5七銀右、△3二玉!と進んだ。ここから、嘉瀬さんの玉は長い長い旅に出ることとなる。以下、入玉を狙って50数手進み「最初は入玉を狙ったのですが…図」。一方的に攻められても、嘉瀬さんの闘志は衰えず入玉を狙った。しかし、ここから入玉を阻まれてしまう。それでも嘉瀬さんの気持ちは折れない。今度は反対側に逃げ続けた。そして、70数手進み「そしてこんなところまで逃げました!図」。これが投了図となり、嘉瀬さんが激闘を制した。
 「シニア界のルーキーはここから粘り続ける!図」〜「最初は入玉を狙ったのですが…図」〜「そしてこんなところまで逃げました!図」と、まずは後手玉の移動距離を見ていただきたい。よくもまあこんなに逃げ切ったものだ!と驚嘆せずにはいられない。そして、先手玉の囲い変化を見ていただきたい。よくもまあこんな囲いが崩せたものだ!と感嘆せずにはいられない。御年を足すと140歳のお二人が、全国タイトルをかけて攻めも攻めたり、守りも守ったり228手の激闘を繰り広げた。素晴らしい一局だった。
 ついに嘉瀬さんが全国タイトルを獲得した。東西決戦が行われた大阪から戻られた後「おめでとうございます。」とお伝えすると、「勝った後に偶然入ったところで…。いやあ大阪は楽しい場所だったあ!」と破顔一笑されていました。その素敵な笑顔を見て「嘉瀬さん、これからもお元気で頑張ってください!」と感じずにはいられませんでした。

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※※※第3部 全国強豪たちとの戦い!※※※
全国強豪たちに技を魅せた三局。
準備中


文責 阿部浩昭

次回更新準備中